フレディド・ローマン

 

『国境なき記者団(Reporters Without Borders)』によると、メキシコでは2000年以降、約150人のジャーナリストが殺害されているという。メキシコは、報道関係者が紛争地帯を除いて世界で最も危険な国のひとつと見なしている国だ。先日も、ひとりの政治記者が殺害される事件が発生した。この記者は、8年前に起こったイグアラ市の学生集団失踪事件についての最新記事をSNSで発表したわずか数時間後に銃撃され、暗殺されたという。

 

8月22日の午後、メキシコのゲレーロ州チルパンシンゴで、オンラインニュース番組「ゲレーロの現実」を運営する政治記者のフレディド・ローマン氏が何者かに銃撃され、車中で死亡しているのが発見されたと地方検察庁が発表した。ローマン氏は、8年前に43人の学生が失踪した事件についてのコラムをFacebookにアップした数時間後に殺害された。同氏は麻薬カルテルが公然と活動する最も危険なゲレーロ州の政治に焦点を当て仕事をしていた。

 

2014年、デモ抗議に向かうバスに乗っていた43人の学生が襲撃され、行方不明になった。この事件は、メキシコ史上最悪の人権侵害とされる。この出来事については、メキシコ政府が学生を誘拐してカルテルのメンバーに引き渡して殺害、または学生をカルテルのメンバーと間違えて殺害したなど複数の説が浮上している。いずれにせよ、真実和解委員会がこの事件は政府機関が関与した「国家犯罪」と分類したことから全国的な注目を集めた。

 

フレディド・ローマン

 

ローマン氏は死のわずか数時間前に、Facebookアカウントに「上司を起訴しない国家犯罪」というタイトルで長いコラムをシェアし、学生の失踪時に元司法長官のジーザス・ムリーリョ・カラムを含む 4人の役人にもたらされた関与の疑いについて言及していた。カラムは今週初めに真実報告が公表された後に逮捕されたが、同時に関与が疑われるカルテルのメンバー、警察官、及び軍関係者に対して少なくとも80件の逮捕状が発行されていたという。

 

ローマン氏の殺害は独立系ジャーナリストのフアン・アルホン・ロペスが北部の国境州ソノラで殺害されてから1週間後に発生した。地元検察官は銃撃の詳細を公表することを拒否しているが、ローマン氏は今年メキシコで暗殺されたジャーナリストの15人目となった。国境なき記者団によると、2000年以降メキシコでは150人以上のジャーナリストが殺害されており、紛争地帯以外でメキシコは現在、世界で最も記者にとって致命的な場所であるという。

 

 

何故なら、メキシコのジャーナリストは、カルテルのメンバーや、その他の組織犯罪メンバーだけでなく、政治的動機を持つ警察や政府関係者から標的にされるからだ。特に、独立系ジャーナリストは危険に直面しやすい。だが、これらの殺害犯は、ほぼ特定されることはなかった。ローマン氏が殺害された翌日、ゲレーロ州チルパンシンゴで、地元のジャーナリストらが州検察庁に向かって行進し、ローマン氏の射殺事件に抗議している様子がTwitterでシェアされた。

 

ジャーナリスト保護委員会メキシコ代表ヤン・アルバート・フーツェン氏は、アルホン・ロペスの殺害後、メキシコでの記者に対する攻撃を「今年は報道による殺害の初期の事件で何人かが逮捕されたが、現在進行中の不処罰の風潮がこれらの攻撃を助長し続けている」と非難した。ローマン氏の殺害が行方不明の学生に関する投稿ゆえの結果なのか、それとも彼の他のジャーナリスト活動が最終的に自身を死に追いやったのかは、現時点では不明ということだ。

 

【参照:exciteニュース】