ノルウェー中央部に位置するヘスダーレンという小さな村の渓谷に1980年台から目撃されるようになった奇妙な光の球の存在が、科学者たちを何年も悩ませている。「ヘスダーレンの光」として知られるその現象は車ほどの大きさの光球になることもあり、UFO研究家の心を奪った。だが、科学者は謎の現象を見るとその実態を解明したくなるようだ。

 

ノルウェーのエストフォル大学で情報工学を研究しているアーリン・ストランド准教授は、この奇妙な現象が頻出して報道陣や、科学者の関心を集めるようになった1982年の頃から、その仕組みを解き明かそうと調査、研究している。彼はプロジェクト「Hessdarren」を立ち上げ、どのようにこの光が発生するのか解明すべく、多くの研究者を結集させた。

 

ストランド准教授が率いる国際的な専門家チームが大きさや形、速さをレーダーによって調べ、また、その光球にどんな物質が含まれているのか光のスペクトルの分析を行い、現地の土壌に存在する鉄やケイ素があると判明した。さらに、光球は音を出さず、低温で地上に何も痕跡を残さないながらも、土壌を滅菌する性質を持つことが分かってきた。

 

そして、研究者らは光球が発生する直前に現場の磁場が微妙に変動していることを発見したが、そのような磁場の変動を招く地震の活動状況などを調べると、特に変わったところがないことが分かった。この不思議な光球の正体は一体何なのかはっきりしないが、現在のところ研究者らは、イオン化したガスが作った「プラズマ」が原因だと考えているようだ。

 

プラズマは物質の状態のひとつで、個体・液体・気体に続く第4の状態とも呼ばれるものだ。分子が放電や高熱などを受けることでイオン化して発生するもので、蛍光灯やプラズマテレビに存在しており、炎もプラズマの一種だ。プラズマを作るには巨大なエネルギーが必要なのだが、ヘスダーレンの光がプラズマだとすれば、そのエネルギーはどこから来るのだろう。