当日は土曜日であったが、不動産関係に勤務する被害者の夫は土曜日も出勤していた。夫は9時頃出勤した。その際、外出する準備をしていた奈美子さんから発熱した男児を小児科へ連れて行くことと図書館に本を返却することを聞かされていた。被害者は同じアパートの階上に住む友人に対しても、子供を小児科へ連れていくことを電話にて告げていた。結局、この日被害者は小児科へは行ったが図書館には行かなかった。

 

10時から11時の間に2度、階上の友人が電話をしたが、繋がらなかった。「小児科から帰ってない」と認識する。近所の住民によると、時刻は不明だが、午前中に被害者宅で人が争うような大きな物音を聞いたという。高羽母子は11時過ぎに小児科受診した。争いを聞いたと証言した住民とは別の住民が正午から午後1時までの間に被害者宅でタンスを動かすような大きな音がした直後、誰かが階段を駆け下りる音を聞いている。 •


午後0時半から午後2時頃の間に友人が3回被害者宅に電話を架けていたが、いずれも応答がなかったという。これらの証言から愛知県警捜査本部では、正午から午後1時までの間に犯行が行われたとみている。午後2時頃、大家が自宅庭で採れた柿を届けようと被害者の部屋を訪れたが応答がなく、また無施錠のままであったため、部屋の中に入った。すると、首から血を流して倒れている奈美子さんを発見し、緊急通報した。

 

通報を受けた警察が駆けつけると、奈美子さんはトレーナーとジーパン姿で室内の廊下から居間に体を投げ出すような形でうつ伏せになり倒れていた。この時点で既に死後1~2時間は経っていたとみられる。徒歩姿の犯人が最初に目撃されたのは12時15分頃、被害者宅から5分ほどの距離にある稲生公園だった。目撃証言や足跡などから、犯人は40~55歳くらいの中年の女で、24cmの韓国製の量販品の婦人靴を履いていた。

 

被害者宅の洗面所及び稲生公園の手洗い場付近に犯人が血を洗ったとみられる跡があることから、殺害の際に被害者ともみ合いになり、左右のいずれかの手にけがをしたとみられており、犯人の血液型はB型と判明している。犯人はしばらく周辺の様子をうかがった後、現場から稲生公園近くまで走って逃げたとみられる。当時、被害者宅には、奈美子さんの他に長男の航平ちゃんもいたが無傷であった。また、被害者宅には物色された跡がなかった。

 

凶器は見つかっていないが、犯行現場には不気味なことに飲みかけの(ヤクルト)ミルミルEが置いてあった。被害者の高羽家ではこの乳酸飲料を飲む習慣がなく、犯人が持ち込んで、犯行後に口をつけた可能性が高いと見られている。このミルミルEは被害者宅周辺では配達・販売されていないもので、販売されていた最寄り地域は被害者宅から約35km離れた西三河地区であった。しかし、犯人と思われる女が同地区と関係があるかは不明である。

 

犯行の動機は非常に見え難いが、一部メディアは犯行当日の9時から11時までの間に奈美子さんが誰かとトラブルになって、その仕返しに襲われたという見立てをしていた。そのため、奈美子さんがネガティブな「マウンティング女」扱いされるネットの書き込みもあった。また当時、新車購入やマンションへの引っ越しも決まっており、「こわいほど幸せ」と知人に話していたことから、夫や友人が関知していない交友関係で妬みを買っていた可能性も疑われている。

 

犯人の似顔絵にモザイク??

 

この事件で不思議なことは警察の対応にもある。なぜか、愛知県警は目撃された犯人の似顔絵にモザイクをかけて公表いていた。それが、2020年2月にこの「名古屋市西区主婦殺害事件」を捜査特別報奨金の対象事件に指定し、犯人の似顔絵からモザイクを外した。有力な情報には最大で300万円が支払うというが、20年以上も前のことなど誰も覚えていない。それでも夫の悟さんと航平さんは現場のアパート住み続け、情報提供を求めている。