ヨーロッパには、分厚い本の側面に絵を描く「Fore-Edge Painting」という本の装飾技法が存在する。17世紀後半より英国で起こったと考えられている装幀技術の一種で、普通の状態では金箔の貼ってある普通の本の小口としてしか見えないものが、一度その小口を斜めに押すと忽然と綺麗な絵が出てくると言うものだ。

 

二重小口

 

日本では「小口絵」ともいわれるこの技法は近年ではほとんど見られなくなった。英国で突然、生まれた装幀技術のようで、中には「二重小口」という双方向に二種類の絵が隠されているものも存在する。不思議なことに最近になるまで、この種の本を知る人は極々稀で、ブリタニカ百科辞典にもその記載が長期間なかったといわれる。

 

 

小口絵の素晴らしさは、本を手に取って開いたときの驚きに尽きるだろう。一見すると、本の断面には何もないように見えるが、忽然と美しい絵が浮かび上がる様子は圧巻。小口の装飾は、その時代の本職人からの現代の私たち対する粋な贈り物といえるだろう。「YouTube」では、世界最後の小口絵師に迫ったムービーが公開されている。