中国における新型コロナウイルスによる肺炎の感染者は連日千数百人増加し、「パンデミック(感染爆発)」の様相を示している。中国国家衛生健康委員会は2月1日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染者が2102人、死者が46人増えたと発表した。これで中国本土の感染者は1万1791人、死者は259人となった。先月30日にはWHOが「公衆衛生上の緊急事態」を宣言している。
武漢市では、病院に患者が殺到し、受診者に対応が追いつかない騒乱状態となった。受診者が1日計1万5000人を超え、診察まで半日どころか翌日まで待たなくてはならないほどの機能不全に陥っている。医師の感染死も確認されている。国家衛生健康委員会の幹部は武漢市と周辺6都市に、全国から計4130人の医療従事者が到着し、先月末までに6000人規模になったと説明している。
しかし、国家衛生健康委員会が発表した中国の感染者数1万1791人は事実なのか、甚だ疑問である。封鎖された武漢市にある湖北航天医院の医師が当局から処罰を覚悟して「湖北省での感染者数は10万人を超え、病院が地獄と化し、助けを求めてパニックになっている。それなのに事実を隠蔽するため外部からの援助を拒絶している」と告発したという内容が複数の中国語メディアが報じている。
中国当局は医療関係者がSNSを通じて、「パニックに陥った病院」の状況を発信することを恐れており、見つかれば警察に捕まる。従って、中国当局は「10万人」という数字を否定するだろうが、WHOの助言者でもある英インペリアル・カレッジ・ロンドンの感染症研究センターの研究者であるニール・ファーガソン氏も「中国における感染者数は10万人を超えている可能性がある」と語っている。
武漢からチャーター機第1便で帰国した日本人206人のうち2名、チャーター機第2便で帰国した210人のうち3名が新型コロナウイルスに感染していた。大雑把に見れば、武漢に滞在していた日本人の1%が感染していたことになる。おそらく日本人は現地の中国人よりは清潔にしているはずだ。だとすると、武漢市の人口は約1100万人で1%なら、感染者数はやはり10万人以上なのではないか。
しかし、武漢の周先旺市長は先月26日の記者会見で、武漢の封鎖前に「500万人あまりが市外に脱出した」と明かしている。そうなると、中国国内での「パンデミック」は不可避である。シンガポールが中国人の入国を禁止するなど、世界62か国が現在までに、中国人に対する何らかの入国制限措置を導入した。日本政府も中国湖北省滞在者の来日を拒否するという対応を打ち出している。
中国当局はまだ、今回の新型コロナウイルス流行の元になった生物種について特定していないが、「中国科学院武漢病毒研究所」が患者のサンプル検査から、コウモリの新型コロナウイルスとの間で96%の遺伝子の一致が確認された発表している。また、中国の別の専門家はテレビ局のインタビューに対し、ウイルスの発生源について「タケネズミやアナグマの可能性がある」と述べている。
だが、米国のバイオセーフティー専門家や科学者らが感染源として注目しているのが、前述の「中国科学院武漢病毒研究所」だ。同研究所はMARSやエボラ出血熱といった危険な病原体を研究するための中国で唯一の研究室がある。同研究所は2018年1月に開設されたが、以前から米国のバイオセーフティー専門家らが「同研究所からウイルスが漏れ出す危険性」を指摘していたのだ。
