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ビジネス行動様式の最新の研究によると、勝者はつねにその実力を人々から過大評価される傾向にあるという。しかし、数学モデルによると、実力が同程度か、やや劣っていたとしても勝敗を分ける要素は運が非常に大きいというのだ。それゆえに研究者は彼ら勝者を無条件にリスペクトし、真似するべきではないと警告している。

人生の勝者である世界最高の富裕層に属する人たちは、とかくお手本として参考にするべきだと思われがちだ。しかし、英ウォーリック・ビジネススクールのチェンウェイ・リューは「人生の勝者が優れていることは確かだろう。だが、彼らが最高のスキルを持っているかといえば必ずしもそうとは言い切れない」と証言する。

リューらが2012年に『Proceedings of the National Academy of Sciences』で発表した研究によると、突出したパフォーマンスを示す人物が最も優れたスキルを身につけているという見解は間違いだという。その理由は突出したパフォーマンスは、ばしば例外的な状況で生じるものだからだ。

すなわち最高のパフォーマンスを示した人物は、しばしば最も運に恵まれた人物であるということだ。彼らは富める者がさらに富めるダイナミクスの恩恵を受け、最初の幸運を増進させることができた人たちだ。一方、成功者は自分の成功が運によるものだとは認めたがらない。彼らを取り巻く人たちもそうなのだという。

その結果、類まれな成功物語ばかりが注目を集めることになる。成功者は最もスキルに長けた人物であるとみなされ、その行動様式が模倣されることになる。だが、リューはむしろ「2位の人物に注目すべき」と述べる。この理論は、スポーツの世界でも当てはまる。昨年の優勝チームに賭ければ、シーズン序盤で負けるだろうことを示唆している。

リューは「勘違いしないでほしいが、スキルや努力に何の意味もないというわけではない。だが、運はそれ以上に影響するのだ」と話す。この場合でいう運は持って生まれた環境も含まれる。 例えば、世界最高の資産家であるビル・ゲイツは上流階級の生まれで、そのためにプログラムを経験することができた。

ゲイツの世代でコンピューターを利用できたのは、全体のわずか0.01パーセントに満たない。彼の母親はIBMの会長と面識があったため、ゲイツはPCのリーディング企業から契約を得ることができ、それがソフトウェア帝国を築くために決定的に重要であった閉じ込め効果を発生させたというのだ。

リューは「もちろんゲイツには、卓越した才能があり、人が想像できないほどの努力を重ねたことは間違いない。それがマイクロソフトの傑出した成功に重要な役割を果たしていいる。でも、それだけでは不十分なのだ。それなのにビジネスで成功を望む人々は最も成功したゲイツをお手本にしようとする」と解説する。

リューの調査によれば、被験者に対しパフォーマンスを評価するうえで明確な情報と動機を与えたにもかからわず、58パーセントが最も成功しているが、最高のスキルと言いがたい人物を「最高のスキルの持ち主」と評価していた。リューは「仮にビル・ゲイツの何から何までを真似できたとしても、彼の最初の幸運までは真似できないから」と断言した。

【参照:pnas】