母屋に着いて広間に入ると三井と涼がいた。座卓に缶ビールや酒瓶、雑多なつまみなどが散乱している。コップや皿の数からしてもっと人はいたんだろう。私たちは2時間近くも遅く帰った勘定になる。でも、つまみは乾き物ばかりで調理されたものがない。女はいなかったんじゃないか。敬子はともかく則子はどこへ行ったのだろう。まさか、吾神会に付いて行ったのだろうか?そうかもしれない。好奇心旺盛で恐いもの知らずである。お節介なところもある。でも、三井に則子のことを聞いても答えられるはずもない。完璧な自己中で興味のないことには無関心だからだ。

 三井の顔がほんのり赤い。この男にしては珍しいことだ。相当飲んだのだろう。気分が久々に良かったに違いない。涼は腹這いになって持って来たノートパソコンを広げている。どうせ、競馬かパチンコのデータ取りだろう。ヌッポリ、自分の世界に入っている。

 「イヨー、色男。何発決めてきたんだ?」

 三井が好みの獲物を見つけた獣のように飛びかかってきた。帰って来たらいいようにおちょくろうと待ち構えていたに違いない。ソレを見越して家に着くなり豊子は押っ放していた。いいように肴にされては可哀想である。

 「一発だよ。オレは長いからよ」私は正直に答えた。

 「ケ、よくいうよ。オメーには羞恥心というものがないのか?」三井の言い草には憎しみが籠もっているようでもある。私には性行為だけは勝てないので嫉妬しているのかもしれない。

 「ないよ。元々、男優だからな。見たいというなら見せてやってもいいが、タケーゾ」

 私はアカンベーをしながら言った。

 「ケ、だれがオメーのなんか見たいもんかい。ただ、オレがやりたくなっちまったんだ。どうもだめだ。オレは酒が入るとなんかやりたくなっちまうんだ。この癖は直らねえかもナ。というか、年と共に激しくなってるようだ」三井が言った。

 「センズリでもこきゃいいだろ」私は笑って言った。

 「パカヤロ。良恵に案内しろ」三井は命令口調である。

 「エーッ」コリャまずい。こっちは後で豊子を特養に送る約束になってる。その時、一発決める予定だが三井は言い出したら聞かない相手である。面倒なことになった。

 「やめとけよ。みっちゃん。たいしたことねえぞ。こっちは末野の接待で行ったから、いいように言ってるがそうじゃねえんだって。干からびた年増ばかりでよう。アンタ、そういうの嫌いだろ?」

 「ウルセー」三井は大声を出した。目が据わっている。まるで飢えた狼男のようだ。

 「案内できねえってのか。そっちは唯一酒が入ってねえから頼んでんだぞ」

 「そうじゃねえったら。これは嘘じゃネエ。道を覚えてねえんだ。一度しか行ってねえし暗かったし、結構遠いんだ。覚えきれるもんじゃねえ。悪いがタクシーで行ってくれねえか?」

 これは本当だった。さあ、行ってみろたって自信がない。いくら脅かされても従わないようにしないと、もっと酷い事態になることは明白である。

 「ソウケー、それはあるかもしんねえなあ。知らない土地ならなおさらだ。道に迷ったら目も当てられねえ。タクシーにするわ。店、何時からだ?」そのもの言いに胸をなで下ろした。早々に追っ払ったほうがいい。私の頭は素早く回転した。

 「早く開けてる。5時からだ。まず店で飲んでから、女のところに御案内って感じだからよ。今からタクシー呼べば、ちょうどいい時間に着くよ」私は笑顔で適当なことを吹いた。

 「ヨシ。じゃ、呼んでくれ」

  三井は機嫌が戻ったようだ。ニタついている。

 

                         続く