「家にはヤロウだけか?」私は聞いた。
「ウウン、お母さんいる。お父さんは亡くなった」豊子が答えた。「他の兄弟のことはしらない。今は家の中、お母さんとふたりだけ。周造さん、引きこもりみたいな感じなんだって。だから茂田井家自体が近所付き合いなくなったみたい」豊子がいう。
「フーン、まあいいや。とにかく行くべ」
私は立ち上がった。茂田井の家がどうだろうがそんなことは関係ない。こっちは周造に話を聞きたいだけだ。
「5人だから、みっちゃんの車で行くか。トヨ。お前、道案内だから助手席ね」私は豊子に言った。
駐車場までは豊子と一番最後を歩いて体を触りまくった。
駐車場に着いた。
「ここがシェルターになるなんて信じられない。竹藪まで繋がってるんでしょ。相当、大きいわよね」
豊子が助手席に乗り込む前に言った。
「デカいたって、下、潜ってんだから関係ねえよ。表は相変わらず駐車場だ」私は言った。
「ア、そうか」豊子はチロッと舌を出した。
皆んな乗り込んで三井がエンジンをかける。
「豊子さん。この辺は空気が美味しいですね。肥やしの匂いもしないし」
三井が横に座った豊子にさっそく話しかけている。私はギョッとなった。三井がそう出るとは考えもしなかったからだ。
「そうなんですか?だとしたら私も嬉しいです」
豊子は笑顔で答えている。私はムカッときた。私が後ろに乗っているのにどういうことだ。
「豊子さんは特養勤めてるんでしょう。立派なお仕事ですね。社会の役に立ってる」
車が発車した。三井は尚も話しかけている。
「そうなんですか。ウフッ、この辺じゃ月王いくか、特養行くかぐらいしか仕事ないんですよー。ちょっとやってみたら結構、楽しいんで続いてます」
「いいなー。豊子さんに世話してもらえるんならオレもその特養入りたい-」
三井は見たこともないような笑顔を作っている。気味が悪かった。私はイライラし三井の頭をひっぱたきたかったが、啓太と涼に挟まれていてそんなマネはできない。
「アー、そこの角、曲がって下さい。三井さんはお仕事何されてるんですか?」豊子に積極性が出てきた。
「飲食店経営です」三井が答えた。
何が飲食店経営だ。小汚いおさわりバーじゃないか。しかもボッタクリ。汚れの癖してオレの女といちゃつくな。私は疑心暗鬼にとりつかれてしまった。三井が本気で豊子を狙ってるんじゃないかと疑ったのだ。
なにせ田舎とはいえ土地付き女である。絞れば美味しい汁が吸える。私が先にツバをつけているが、そんなこと考えるタマではない。私はしまったと後悔していた。ここの所、立て込んでいて豊子との体の契りを後々にしてしまった。ここにきて三井にかっさらわれたら泣くに泣けない。女は結局、体を許した男に着いていく。三井はその道のプロだ。豊子を手なずけることなど朝飯前である。
まずいぞ。まずいぞ。私は茂田井のことなどどうでもよくなった。1分1秒でも早く豊子と関係して深い絆を築きたかった。
私のそういう胸の内とは裏腹に三井と豊子はしゃべりどうしである。K国での圧死事件がネタになっていた。
「K国人て馬鹿なんですよ。なにかつうと押しくらまんじゅうですから。ハエみたいにたかるのが好きなんでしょうね。それでいて、ヤバいという感情は湧いてこない。こないだは舟に乗りすぎて沈没とくる。今度は道端で立ったまま圧死ですよ。笑うというかアキレますね。どこまで馬鹿なんでしょうかね?おそらく脳味噌がハエなみなんでしょうね」
三井が笑いながら言う。
「ハハッ、イエてる。笑えるわー。三井さんて面白いンだからもー」
豊子は手をたたいて喜んでいた。
茂田井周造の家に到着した。庭は広い。義行の家に似ているが規模はもっと大きい。端に煙突の立った小屋がある。おそらく風呂だろう。その横に小道を挟んでトタン張りの大きな鶏小屋があった。コケコッコーの鳴き声が聞こえる。
続く