「女囚徒」。戯曲。
★98年12月30日(水)
『定本 小林多喜二全集』の第一巻の残りを読む。残りは原稿のままのものとか、ノートのもの。生前未発表の作品ということだろう。
「龍介と乞食」。乞食を見ると助けてやりたいが、それがまた恥ずかしい、というような、早い話しがそういうもの(笑)。
「ある改札係」は、万年改札係のおじさんの話。家庭の様子なども出てくる。まあ、要するに中年の悲哀である(笑)。
「来るべきこと」は、やはり瀧ちゃんのことなのだろう、夜間学校の先生と女生徒(売春婦をやっているらしい)の話。小林が言っていた循環小数が出てくる。
「雪の夜」も同じく、瀧ちゃんものだろう。
『定本 小林多喜二全集』の第二巻を読む。
「残されるもの」。売春屋の女たち、玉子、光代、時子。その近くの住宅に銀行員の夫婦が引っ越してきて、という話。売春屋を、そこにいる女たちの目から描いたもの。
「最後のもの」は、貧しい家の女の子、母親と弟が病気になり売春をすることになるという話である。売春する場面は描かれず、それは話の落ちとしてもってきている。だから、中心は、なぜそういうことになったか、の過程の話である。まず亭主=父が死ぬ。残された母親は幼い子供を他所にやる。残った長女が売春に、という形である。彼女を救おうとする哲夫という工員が出てくる。その哲夫の送る手紙に、ゴールキー(ゴーリキー)の「超人」の話が引用されている。
「誰かに宛てた記録」は、貰われて行った子供(女の子)が学校の先生宛に書いた作文の体裁をとっており、作者小林はそれを拾ったという枠が作ってある。原稿用紙が抜けているとか、子供の作文だからというので文章が整わない風に作ってあって泣ける。
「瀧子其他」これも売春屋の女たちの視点によるもの。瀧子、光代、初恵。初恵が逃亡したりするシーンはあるが、瀧子がやはり中心になっている。瀧子は身受けされてまた戻ってくるということになっている。最後の最後には、火が出てこのあたり一帯が焼ける。
「瀧子其他」が完成度が高いように思う。というか、それまでの一連の売春婦(インバイといった方がいいが、漢字がすぐにでないので、売春婦と書いておく)ものの集大成のように思ったのだ。
が、この巻で一番長い「その出発を出発した女」、これは長編を目指して未完、中編にとどまっているものらしいく、かつ異なる原稿が二つあるが、これがまた同じテーマである。ここでは、玉子、光代、文子。文子の視点が多い。最初の原稿では文子と、安本という客との恋が描かれている。二つ目の原稿では、玉子と客(鳥打帽子の男)との関係などが入って来る。後者では文子が逃亡を試み、たまたま出会っていて学校時代の同級生のところに身を寄せることになっている。
この辺の女たちのキャラクターは、同じ様な名前が使われているけれども同じではなく、例えば「瀧子其他」の瀧子が、「その出発を出発した女」の玉子に似ていたりする。どうも、客との恋、逃亡、諦めといったところが、通過儀礼的に描かれているところもある。だが、「その出発を出発した女」の文子は、そうした、他の女たちの通常の経路を拒んでいるようなところも描かれる。
キャラクターばかりではなく、道具建て(バーや売春宿の名前とか様子とか)や、ここに至る経路(コークスを拾って燃料の足しにするとか、豆の選別工場で働くなど)など、細部はあっちこっちで同じものが使われている。
「瀧子其他」あたりに、循環小数の話が出ていたように思うのだが、今改めて探してみると見つからない。