(映画)赤い殺意 | 翡翠のブログ

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*意外と面白い!
過去の日本映画。

今は漫画原作等軽いものが多くなっていますが
(漫画原作全てを否定はしませんがーーーー)
昔の日本映画は地味なようでいて、人間の深淵が描かれていたり、
今、観なおしてみるとその価値がよく
わかったりします。



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『赤い殺意 (1964)』とは

直木賞作家、藤原審爾の小説が原作。監督の今村昌平が後のある対談で「日活時代に撮影した作品の中でも最も印象深い作品」として名前を挙げた作品である。夫におびえ愚鈍で従順な主婦貞子を春川ますみが、小心者でケチな夫を水戸黄門でおなじみの西村晃が演じている。西村はこの演技でブルーリボン賞助演男優賞を受賞した。



『赤い殺意 (1964)』のあらすじ

東北大学の図書館に勤める夫吏一と息子勝と暮らす主婦貞子。夫が出張に出ていた夜、貞子は眠っているところを強盗に入られ乱暴されてしまう。生きてはいけないと思った貞子は自殺を試みるが息子の事が気がかりで死ぬに死ねず、出張から戻った夫にも出来事を打ち明けることが出来ずにいた。事件の二日後またしても強盗が家に押し入り貞子を求めた...
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『赤い殺意 (1964)』のスタッフ・キャスト


スタッフ

今村昌平
長谷部慶治
今村昌平
藤原審爾
高木雅行

キャスト

西村晃
春川ますみ
赤木蘭子
加藤嘉
北村和夫

(以上ネットより)




(ネタばれありの感想です)
昔むかし、
小さい頃に見た記憶が。
テレビドラマでもやってたし。
ドラマ版は八木昌子だったかな。
あれはあれでなんだか
忌まわしい雰囲気で、子供心には怖かった。
(市原悦子も演じていたようです)


本作にも怖い記憶があったが、
今回見直してみて、
こんなにユーモラスだったのかと
少し驚いた。
幼い時に見てわかるような内容でもないし、
大人の映画だ。

やっぱり昔の邦画はレベルが高い。
私は今村昌平は、あまり好きとは思えないが、
しかし、人間を描くその手腕は確かなものがあると
感じた。

あらすじを読めば、悲惨な話だ。
自分のせいではないのに、その出自を責められ続けたり、
入籍してもらえなかったり、
義母は冷たいし、夫は彼女を女中くらいにしか
扱わないし、可愛そうな境遇だ。



しかし、憐れ一辺倒でもないのが面白い所。




凌辱された後、「死なねば」と
思いつめ、家の前の土手の上の線路まで行き、
列車に飛び込もうと手を伸ばすのだが、
全然届いていない。
この場面はおかしくて笑っちゃった。
その後、ごはんをほおばったり。
繊細なような、図太いような。
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その後もことごとく自殺に失敗。


ところどころ、悲惨なのに、笑える場面があって、
監督自ら「重喜劇」と名付けたのがよくわかった。

悲劇ほど、喜劇的・・・そんな表裏一体なのが
人間、人生なのかもしれない。
それをたくまざるユーモアで描いている。
人間のあわれさ、愚かさ、たくましさ。


また、春川ますみがいい。実にいい。
作品中で「デブ」と言われるが、そこまで
巨体という訳でもないけど、
あの体型こそがこの人物の造形の鍵を握っているような
感じがした。

「肉感的」というのだろうか。
といって、それが官能的、とまではいってないように
思う。ただ、男からしたら何か魅力がある、そんな
女の存在感を見事に表している。

夫の西村晃も名優だと改めて思う。
なんともいえない厭らしさ、吝嗇の小心な
男を演じている。



学もなく、ただ夫や姑の言いなりになるしかない
耐えるのみの女、そんな印象が、話が進むにつれ
変貌していく。

ついに強盗の男を殺そうとまで思い詰めるが、
元々病身だった男は、手を下すまでもなく死んでしまう。
しかしその二人を、夫の愛人がずっと
後をつけて、撮影していたのだった。


その証拠の写真が夫の手に渡れば
貞子は家から追い出されるだろう。
子供だけとられて。

どうなるのだろう、と思いハラハラしながら
見たが、その愛人はあっけなくトラックにはねられ
死んでしまう。
このあたりのシーンのショックは見事だ。

しかし、彼女が残した写真を結局は夫が
見る事となり、貞子を詰問するに至る。
この辺も面白い。
どういい逃れるのだろうかと
思ったが、どう考えても下手くそな
バレバレの嘘をついて、夫から
追及される。
「でも、私でないもの」
と、決して認めない。
とうとう嘘をつきとおしきってしまう。

その上、入籍も果たし、名実ともに
夫の妻となり、その家の人間となったのだった。


だからと言って「ハッピーエンド」のような
晴れ晴れとした終わり方でもなく
複雑な表情の貞子で終わりを迎えるのだった。
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このシーンも印象的。


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このイメージも見事だ。





*「パラサイト」半地下の家族の
監督、ポン・ジュノが自身の好きな映画
35選の中にこの「赤い殺意」が入っているのだが、
彼の作品を見れば、なるほど、とうなづける。

悲惨な話なのにユーモラスで笑える、
まさに踏襲していると思った。



(私の別ブログで過去掲載した感想記事です)