京都で観光客排斥運動が起こる恐れアリ…!インバウンドの深き闇

「ここまで来たか!」の驚きの実態
「このままだと外国人観光客の排斥運動が起きるかもしれない」。

そう警告するのは京都市会議員の村山祥栄氏だ。リクルート(現リクルートホールディングス)勤務を経て、25歳の最年少で京都市議に初当選した村山氏は『京都・同和「裏」行政 』『地方を食いつぶす「税金フリーライダー」の正体 』などの著作があり、普通の市民の目線でタブーなき問題提起を続ける異色の市議だ。

氏をはじめ京都市民が直面した「インバウンドの言ってはいけない真実」とは……?

インバウンドの勝者・京都に異変が……

オリンピック、世界的観光客数の大幅増、LCC(格安航空)の普及……観光立国・日本を目指して、日本中が海外からのインバウンドに沸き、全国の自治体で観光客誘致合戦が繰り広げられている。


「観光客誘致合戦」の圧倒的勝者ともいわれる京都。京都市は日本の中にあって、日本を代表する観光都市であり、観光先進都市の矜持だけでなく、全国最先端の観光政策を展開してきた、まさにトップランナーだ。

観光客だけでなく、全国の自治体が観光政策の視察にひっきりなしにやってくる。


観光客は増え続け、それにあわせて土産物屋、レストラン、ホテルが続々と誕生する。観光消費額が年々増え続ける。著者が地方へ行っても、「さぞかし、京都は、街は賑わいに溢れ、景気が良いことでしょう」と口々に言われる。

しかし残念ながら、京都市は全国屈指の財政危機状態で、市民に豊かさの実感はなく、観光客に対する感謝の念を寄せる住民はごく一部に留まっている。それどころか、京都市のインバウントは次なるステージへ移行を始めている。

市民が乗れないバス

「全然バスに乗られへん。乗っても今度は降りられへん」


そう嘆くのは、鈴木一郎さん(仮名・82歳)だ。高齢者の足はたいてい公共交通機関で、京都市の場合ほとんどが市バスだが、近年、市民がバスに乗れないという事態が頻発している。原因は観光客だ。


兼ねてから、桜と紅葉のシーズンの土日にはそういった光景が見られた。

しかし、京都市が進めてきた入洛客の季節の平準化と純粋な観光客の増加により、バスには年中観光客が溢れるようになり、市民にしわ寄せが起きている。


昼間だけならともかく、満員バスのせいで、通勤客がバスに乗れず、出社が遅れるといった苦情も増えている。不満の声は続く。


「バス乗ってもな、なんやあのリュック、3人分はあるで」
「ガラガラ(スーツケース)もかなわんわー。動けへん」


外国人観光客は荷物も多く、それがさらに車内を混雑させる。

京都市では、対策として京都駅にスーツケースの配送サービスコーナーを設けて対応しているが、まったく追いついていない。

それ以上に民泊や簡易宿泊所が中心部だけでなく、周辺の住宅地に乱立したことが拍車を掛ける。




交通課題はバスだけに留まらない。観光地での歩道の混雑は日常茶飯事、土日の道路混雑も年々酷さを増している。

京都の交通インフラは、147万人の市民とせいぜい4000万人程度の観光客(地下鉄東西線開通時は3000万台で推移)を想定されており、また観光スタイルも昨今のようなスーツケースを持ち歩く個人旅行ではなく、従来は団体旅行が中心だった。

この10年だけ見ても公共交通の旅客数は2割以上増加し、キャパオーバーしてくるのは当然のことである。

観光客で溢れかえる京都市内のバス停。photo by Shoei Murayama

崩壊する市民生活

「毎日寝られない! いい加減にしてほしい」


そう訴えるのは、隣家が民泊になって困惑する吉田ひとみさん(仮名・40歳)だ。

ある日突然、隣に民泊が誕生し、トラブルになるケースが多発している。

深夜にもスーツケースを引く音が閑静な住宅街に鳴り響く。


彼女の家は民泊ではないが、民泊の場所を間違えたり、民泊の場所を聞きにくるなどされるという。

ケースはまちまちだが、突然自宅の呼び鈴が鳴り、外国人観光客が聞きなれない言葉でまくし立てられることが頻発しているのだ。


外国人観光客が夜な夜な騒ぐことは日常茶飯事で、町家が多い東山区を中心に住民が悲鳴をあげる。民泊に対する苦情件数は年々増加し、民泊の法整備が整った今も京都市は民泊に独自ルールを設定し厳しい規制をかけ、京都市内では実質民泊の開業ができない状況になっている。


宿泊施設の確保の問題以上に、住民の怨嗟の声が大きくなったことを表す象徴的な事案である。


京都市では独自条例で民泊を大幅に規制、さらに民泊通報・相談窓口をフル稼働されたため、新設は激減し、違法民泊はことごとく廃業に追い込まれた。

しかし、民泊規制が強化された結果、簡易宿泊所の新設の方が設置が容易になるという逆転現象が起こっており、一服感はあるが簡易宿泊所はいまだに建設され続け、住民の拒絶反応は変わらず根強い。



激震、景観条例が規制緩和へ!?

2018年11月、京都市は厳しい高さ規制などを盛り込んだ景観条例の規制緩和を打ち出し、京都の景観が失われるという危機感が全国を駆け巡った。


しかし、これも京都独自の課題があることを指摘しなければならない。

京都市の門川大作市長は就任以降、観光文化都市に大きく舵を切り、ホテルを誘致し、観光客の誘致を進めてきた。

観光人口の大幅増という大いなる追い風はあるものの、観光戦略として一定の成果を収めるに至った。


しかし、その一方で、京都市の課題は若者世代の流出が止まらないことにある。

端的に言うと、仕事を求めて大学生が、また、廉価な住宅を求めて新婚世帯が大量に流出している。つまり、「働くところ」「住むところ」が確保できず、若者世代が流出することで都市の根幹が揺らぎ始めているのである。

中心部の土地はほぼ例外なくホテル建設用地へと転用され、新築のオフィスビルやマンションは姿を消した。オフィスの空室室は0%台を推移し、賃料は過去最高を更新している。住宅価格も著しい高騰を続けた。

そもそも京都市は、景観条例が成立して以来、大通り沿い31メートル、その他15メートルという厳しい規制から高層化ができず、そもそも中心部のマンションやオフィスビルは高い収益が期待できない。それでも一定の収益率を確保できるホテルの一人勝ちは当然の結果だった。


そこにインバウンドが追い打ちをかけた。

住宅に比べ利回りが高い宿泊施設が高値ですべて買い占めてしまい、マンションデベロッパーは土地を仕込めず悲鳴をあげる。

今回の景観条例の規制緩和は、こういった背景から打ち出された苦肉の策ともいえる。

インバウンドのための景観政策が、インバウンドによって見直しをせざるを得ないというのは皮肉としか言いようがない。

photo by iStock

観光公害で、観光客排斥運動も?

「観光公害」──。


そんな言葉が市井からは漏れ聞こえてくる。

京都市は京都市市民憲章に「観光客を温かく迎えましょう」という掲げているが、温かく迎えられない環境になりつつある。京都市のインバウンドは、観光客誘致という局面から観光公害対策という次のステージに舞台を移しつつあるのだ。


しかし、海外に目を向けると、これは決して驚くべきことではない。


イタリアの水の都ベネチアでは、人口5万人に対し3000万人の観光客が押し寄せ、住民生活を脅かしている。賃貸住宅が民泊に用途変更され、住民は郊外へ移住を続けている。町中に観光客が溢れ混雑し、町全体が観光地化し、肉屋、パン屋、洋裁店など市民生活に欠かせない店は次々と廃業するなど生活に支障をきたす有様だ。


観光客のマナーの悪さも住民感情を逆撫でしている。クルーズ船のせいで潟の環境破壊も懸念される。

結果、反観光客デモも日常茶飯事となった。観光都市が観光客を追い出しにかかるという異常事態が繰り広げられているのである。

まさに観光客にとっても住民にとっても不幸な構図だ。ベネチア市は観光客の移動を制限したり、クルーズ船の乗り入れ禁止、エリアによる入場制限など市は対策に乗り出している。


バルセロナの観光客削減策


京都市(人口146万人)の同規模で似ているのは、スペインのバルセロナ(人口160万人)だ。ベネチア同様に観光公害に悩まされた当市は、民泊には固定資産税の上乗せを行い、ホテルをはじめ観光関連施設の建設を認可しないとし、実質的な観光客の削減策に乗り出している。


観光公害問題は深刻化すると、観光都市は観光客が来ることによる観光消費額をはじめとした経済的効果や文化交流などのメリットを享受できなくなることはもちろんだが、観光客にとっても満足値の低い残念な旅行になり、誰も得をしない「三方よし」ならぬ「三方悪し」になりかねない。

残念ながら、ここ数年、京都の観光客の満足度も年々ポイントを下げている。


インバウンドに成功すると必ずやってくる観光公害。観光客一辺倒のインバウンドは必ず住民との対立を生むことは歴史が証明している。


観光客の適正数の検討、それを見越したインフラ整備、住民に対する納得感の創出など早期に着手しなければ、京都でも観光客排斥運動が起こる日はそう遠くないかもしれない。

(転載終了)




★受け入れた際の対策を何も考えずに、ただ

「観光立国!」「インバウンド!」などの掛け声のもと、

規制緩和し、大量に外国人観光客を増やした結果、

住民が迷惑を被り、その不満が観光客に向けられてしまいます。


三千万人に増やす!とか数字を高らかに掲げるのは

いいけれど、あきらかなオーバーツーリズムであり、

対策は自治体、そして地元住民に丸投げ!


全く無責任です。