「ありがとうございました。わたしはこれで・・・・」
「おくってくよ?」
「いえ結構です。では」
「ばいばい」
「さよなら」
もうこのあたりはすっかり暗くなっていて、街灯がよく目立つ。
(この時間は人通りが少ないんだよなぁ・・・)
歌織の通学路は住宅街で、街灯も少なく、人もあまり通らないのだ。
ザッザッザッ
ザッ・・・・ザザッ
(え・・・)
歌織の足音のほかにもう1人の足音が聞こえる。
(だれ?)
不安になりながら後ろを振り向くと、うっすらと人影が見える。
(少し速く歩こう)
ザザザッザザザッ
ザザザッザザザッ
(え・・・・)
タッタッタッタッ
ダッダッダッダッ
(つけられてる!!)
どんどん足音が近づいてくる。
タタタタタタ
ダダダッダ
もう足音は後ろにせまってきている。すると腕をつかまれた。
(ヤダッ!!)
そう思ってカバンをふりまわした。
「いって!!」
「やだやだ!!こないで!!」
「ちょ、おれだって」
「やだ や・・・え?せ、先輩!?びっくりしたぁ・・・・・・・。もう、なんで
こんなところにいるんですか?」
「追いかけてきた。」
「え、じゃあさっきのも先輩の陰だったのかな?」
「いや、たぶんあのオジサンだよ。」
「そうだったんですか・・・。」
「あいつ、駅からかおりちゃんのことつけてたから、これは
あぶないなぁと思って☆」
「・・・・・・・ありがとうございます」
「じゃ、家まで送ってくよ。」
「え、いやもうすぐそこですから」
「またつけられて涙目になったらダメだろ?」
「涙目!!?・・・・・・おねがいします。」
「じゃ、行こっか。」
(駅からって・・・気付かなかった。)
「先輩って家はこの辺なんですか?」
「うん。おれもこの住宅街に住んでるよ」
「あ、そうなんですか・・」
「じゃ、朝一緒に行く?あ、でもおれ朝練で早いんだった!!」
「あ、わたしも朝は早いんですよ。朝練あるんで」
「え、強制?」
「いえ、自主的にです。」
「そうなんだ~えらいね」
「そんなことないですよ!先輩も自主練でしょ!!」
「あは☆知ってたの?」
「そりゃー見えますから・・・」
「見えてたんじゃなくて、見てたの間違いじゃないの~?」
「何ふざけたことを言ってるんですか・・・あ、わたしの家、こっちの道
なので」
「あ、おれもこっちだから大丈夫」
「ホントですか・・・?」
「ホントだって!!」
「あ、見えた。」
「え、あれ?」
「はい。そうですけど・・・」
「おれん家あそこなんだけど」
先輩が指さした家はわたしの家の目の前だった。庭は花が咲いていて
すごくきれい。
「え!!目の前じゃないですか!!」
「うわぁ すごい偶然だね」
「知らなかった。」
「おれも・・・朝は大体同じ時間に出てるはずなのに」
「てか先輩の家大きっ!!」
「そう?」
先輩の家はわたしの家の1.5倍はある。
「なんかやだなぁ」
「なんで?」
「いえ、別に・・・じゃ、失礼します」
「あ、待って!!」
わたしがドアを開けようとしたときに先輩が叫んだ。
「なんですか?」
「メアド交換して」
「・・・・・・はい?」
「だから、メアド交換してって言ってるの」
「え、でも・・・先輩とはそんなに親しくないし・・・」
「今日一緒にケーキ食べたじゃん、一緒に帰ったじゃん
助けてあげたじゃん。」
「助けていただいたのは感謝しますけど、一緒に帰ったのだって
1回きりだし・・・」
「いいじゃん。もうおれら友達だろ?」
「友達・・・」
「そう!!だから交換して」
納得いかない心には気づかず、「友達なら・・・」とメアドを交換した。
「よし!!じゃあまた明日」
「さよなら・・・」
先輩が家に入ったのを見たあと、歌織も家のドアを開け、部屋に入り
ベッドにうずくまった。
「はぁ・・・・友達・・か」
そう思っているとカバンの中でメールの着信音が鳴った。