奇縁まんだら④ー浮気の数だけ着物の数ー丹羽文雄 | 京都案内人のブログ

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寂聴さんが、まだ作家を目指して

いた頃の話。

 

 

すでに文豪だった丹羽文雄は、

文壇の長谷川一夫といわるほど

の美男子だった。

 

 

若き日の丹羽文雄(なかなかのイケメンだった)

 

 

 

丹羽は、後進育成のため、自費で

「文学者」という同人雑誌を発行

していた。

 

 

それを知った寂聴さんは、大胆に

も「文学者」に入れてほしいと

手紙を出した。

(この人は本当に大胆だ)

 

 

 

丹羽文雄 画:横尾忠則

 

 

期待してなかった返事の葉書が

すぐ来て、毎週月曜日が面会日

だから自宅に来てもいいという

文面だった。

 

これで丹羽家へ出入りが始まった。

 

 

数年して寂聴さんも作家となった

ある日、座敷で丹羽夫人とお茶を

飲んでいると、話が丹羽さんの

艶聞に及んだ。

 

 

夫人いわく、若い頃から最近まで

色々とあったそうだ。

 

 

夫人は腹を立てると、

「着物を買ってやるの。私の着物

は丹羽の浮気の数かしら」

 

 

話が弾んで、襖奥に並んだ箪笥を

開いて見せてくれた。

突然、二人の背後から声がした。

 

 

 

丹羽文雄 画:横尾忠則

 

 

 

「俺はこんなにしていないよ」

 

 

いつの間にやら丹羽が2階の書斎

から降りて来て、一部始終を聞い

ていたらしい。

 

二人はびっくり仰天したが、

それから笑いが止まらなかった

という。

 

 

 

 

 

瀬戸内寂聴「奇縁まんだら」より

著:瀬戸内寂聴 

画:横尾忠則

発行:日本経済新聞出版社