清和院御門
清和院御門と寺町御門に続く南北の築地塀の内に
大宮御所と京都仙洞御所※がある。
※京都仙洞御所とは、皇位を退かれた天皇の御所をいう。
後水尾上皇のとき、3度焼失し、その都度再建され、以後、5代の上皇
が使用された。1854年(嘉永7)の大火で京都御所とともに焼失し、
造営されないままとなった。
京都仙洞御所の呼び名となったのは、皇居の仙洞御所に対するため。
大宮御所とは、皇太后の御所をいい1867年(慶応3)に造営された。
清和院御門(中央やや左)の北築地塀
寺町御門(門内右が仙洞御所の南築地塀)
寺町御門(中央やや右)と仙洞御所の南築地塀
現在、京都仙洞御所には二つの茶室以外に建物はなく、
南北に展開する雄大な庭園が残されている。
京都仙洞御所の北池
京都仙洞御所の八つ橋の藤(南池)
また同じ敷地内の北西にある御殿が大宮御所で、
英照皇太后(孝明天皇の女御)のために造営されたもの。
天皇の京都での宿泊所となる大宮御所(京都仙洞御所北西)
天皇皇后両陛下および皇太子同妃殿下が入洛された
際の御宿舎として用いられる。
清和院御門
清和院御門を入ると京都仙洞御所の北の築地塀が続き、
その先に仙洞御所の参観の入口がある。
(現在は参観休止中:4月25日〜5月11日)
京都仙洞御所の参観入口(右)
また京都御所と京都仙洞御所の辻となる場所で、
南北に通る当時の月之御門通は現在の倍ほどの道幅があった。
京都御所(左)と京都仙洞御所(右)の辻
江戸時代の月之御門通は右側の森の半分ほどが通りだった。
中央の森の部分が月之御門通だった
またこの辻の東に建春門、南側の築地塀の中央に建礼門、
その東南角の間に道喜門(穴門)と呼ばれる潜戸がある。
京都御所の東南辻(やや左が建礼門、右が建春門)
建礼門(左)と道喜門と呼ばれる穴門
室町時代、応仁の乱で京も御所も荒廃して、
天皇といえどその日の食事にもこと欠く有様だった。
餅屋を生業にしていた川端道喜(初代は渡邉姓)は、
そんな天皇の窮状を見かねて、
毎朝、天皇の朝食(御朝物:おあさもの・塩餡を包んだ餅)
を献上した。
道喜門(この門から毎朝、天皇の朝食が届けられていた)
「川端道喜」:
創業1503年(文亀3)の京都でも老舗中の老舗の和菓子屋。名物は粽で、すべて予約制。京都市左京区下鴨南野々神町2‐12・075-781-8117
これが始まりで、その明治天皇が東京に移られるまでの
300年以上に亘って、天皇の御朝物を届け続けた。
その運んだ門が穴門で、ここだけ道喜門と呼ばれる。
清和院御門の右手(北)の森の中を少し歩けば
京都迎賓館が見えてくる。
京都迎賓館は、京都府・京都市の積年の誘致で、
2005年(平成17)に完成し、4月17日に開館した。
京都迎賓館中庭の池
また、2016年の春から一般公開も実施されている。
(現在休館中)
この迎賓館の前の松林に学習院跡の説明板が立っている。
1847年(弘化4)孝明天皇の時に開講した学習所。
公家や御所の役人の子弟に国学や歴史を教える
ことを目的に、学習院※と命名された。
学習院跡:
現在の皇統の最初の光格天皇が、公家の教育振興をはかるために
発案し、仁孝天皇の在位中に幕府によって御所の建春門の前の創設
が認められた。
また、このすぐ近くに「松桜」と呼ばれる山桜がある。
松桜(開花状態)
松桜(開花前)
春の大風で倒木(1996年)した老松の幹から、
山桜が芽を吹いたもので、今では御苑内の名物の
一つにもなっている。
松桜(4月下旬)
寺町御門を入ってすぐの南側(右)は富小路広場や
ゲートボール場、テニスコートなどの施設がある。
寺町御門
寺町御門(内側より)
正面にテニスコート、右側にグランドがある
とくに広場のある場所は、かつての明治時代に
開催された第10回博覧会までの会場があったところ。
現在はその痕跡すらないが、富小路広場として野球場や
運動公園として使用されている。
博覧会場跡:
東京遷都後の京都が寂れるのを憂慮した京都府関係者らは、1871年
(明治4)、日本で最初の博覧会を西本願寺で開き、京都の伝統産業品
を網羅して展示、殖産興業を図った。第2~9回までは仙洞御所内で開催
されたが、1881年(明治14)からは京都御苑のこの地に建設された
常設会場で行われた。その後、1914年(大正3)から岡崎の京都市勧業館が会場となった。
「京都御苑の9御門」は本日が最終回です。
すでに5月となり、長々とお付き合い頂いた方々には
感謝申し上げます。
なかなか終息しないコロナ禍、なかなか外出も
ままならない方も多いと思います。
京都にも非常事態宣言が発出され、京都府や京都市が
管理する施設などもすべてが休園や休館となっています。
京都に来れない方々に、せめても今の京都の
雰囲気をお伝えしたいと思っています。
よければ、またご訪問頂ければ幸いです。