くよくよ悩むのは「十秒」・・・・・
心病の本(もと)は ただ一つ、無明(むみょう)これなり
<十住心論(じゅうじゅうしんろん)>
人生に悩みがない、という人はなかなかいません誰もが、悩みや不安を抱えて生きています
お大師(弘法大師)さまは、その原因は「無明」であるといいます。無明とは、欲望や執着心のあらゆる煩悩の根源にあるものだと言われます。
この無明を取り払い、葛藤を克服することで、心を強くすることができるのです
その際、必要な姿勢のひとつが、むやみに思い煩わない ことです。
生きているうちは、どう逆立ちしたところでかなわないことがあります。自然現象を考えればいい。翌日に屋外で活動する予定があって、どうしても雨が降らないでほしい。
どんなにそう願っても、天気を自在に変えることなどできません
また、すでに過ぎてしまったことを思い煩うことも、意味がないことです。「覆水(ふくすい)盆に返らず」という言葉もあるではないですか。
悩もうと思い煩おうと、過ぎたことはもとには戻りません。
★深みにはまらない
誰もが、そんなことは分かっているのです。しかし、気付けば思い煩っている自分がいる、というのもまた、人間です
仕事で疲れていたり、人間関係で精神的なダメージを受けていたりする時は、深みにはまりかねませんマイナス感情、マイナス思考からいち早く抜け出すには、ちょっとしたコツが必要かも知れません
わたしはこう考えています。
「マイナス感情、マイナス思考を持つのは十秒までとする」
十秒で別のことに考えを向ければ、深みにはまることはありません。それを超えると、ズルズル引っ張り込まれる
とはいえ、気持の切り替えが得意でない人には、いささか荷が重いかもしれませんそんなときこそ、言霊(ことだま)の力を借りるのです
好きな言葉、楽しい言葉、気持を明るくしてくれる言葉・・・・・・これらを大きな声にしていうのです。
「つまずいたり、転んだりするほうが自然なんだ」
「幸せはいつも自分の心が決めるんだ」
何でもかまいません。心がふっと軽くなる、気持が前を向く言葉を声にすると、マイナス感情は離れます。これを習慣にすることです。
すると、とらわれているな、と感じたとき、反射的にいい言葉が出るようになります
それが自分にとっての”真言”、つまり生きる上での指針となる、いつわりのない言葉ですすぐにでも見つけましょう
・・・・by 『空海「折れない心」をつくる言葉』
高野山真言宗伝燈大阿闍梨
最福寺法主 大僧正
池口 恵観(いけぐち えかん)