職場の広報部で いつも忙しく外回りをしている
上谷 俊介（かみや しゅんすけ） ４５歳
この日はめずらしく社内のスキルアップ研修に参加することになった
商品の知識を更に深めるために職場の代表として選ばれてしまった
忙しいのに今日は一日研修で缶詰状態 出来る事なら出席したくなかった
それに他の支部の営業部門の人も大勢来る 知らない人も多い
それも憂鬱な原因の一つ
男女合わせて３０人位研修室に集まった
このメンバーで今日は一日研修を受ける
本社の技術部門の講師が話す言葉をノートに書き留める
時折笑いもあるので眠気が来ることはなかった
１時間の研修が終わって １０分休憩の後に 次の研修が始まった
その時 隣に座っている人がボールペンをカチカチやっていた
筆記用具を探すためか バッグの中をいろいろ見ていた
ふと横を見るとボールペンが書けなくなっているようだった
グルグル回して書いていたけど インクが切れている感じ
自分に予備の新品のボールペンがあったので
「よかったら どうぞ」 その人に渡した
「すみません 助かります ありがとうございます」
丁寧にお礼を言われた
ちょうどこっちを振り向いたときにネームプレートが見えた
與那城 伶奈（よなしろ れな）
ずいぶん変わった名字だな
２０代かな 同じ会社にこんな素敵な女性もいるんだと思った
でも 支部は随分遠い場所にある
今日の研修が終わったら もう会う事も無いだろう
長い研修が終わって 帰りに伶奈さんから
「このボールペンお返しします」
と言われたけど 自分は受け取らなかった
「ここに来た記念にお渡しますので」
「遠い所まで お疲れさまでした」
伶奈さんとは最後こんな会話をして長い研修がやっと終わった
次の日からはいつも通り 忙しく外回りだ
その研修から一ヶ月位経ったある日
本社から商品の方向性を各支部間で議論して
その結果を本社に議事録として送ってほしいという要望があった
なんでこんな忙しい時に それも業務外の仕事 ちょっとイラっとしたけれど
仕方がない
週に２回 各支部間をパソコンで繋いで打ち合わせをする事になった
商品別に打ち合わせのグループが分かれ
自分のグループは６人のメンバーだった
各支部の名簿を見たら その中に
與那城 伶奈
という名前があった
あの時の名前
夕方６時から会議は始まり
６人が議論していく
会議用のアプリでは発言する人もいれば
チャットで参加する人もいる
自分はチャットで参加していた
８時近くなって初日の会議がそろそろ終わりかけようとした時
自分用に個別のメッセージが入って来た
「あの時は ありがとうございました」
伶奈さんからだった
会議が終わってアプリをログアウトしたあとは
社内メールで少しやりとりをした
本当は女性の先輩が研修に参加する予定だったけど
その人が出張になってしまい 代わりに伶奈さんが参加することになったらしく
そして そのまま今回の打ち合わせのメンバーにも入ってしまったと
慣れない仕事で大変 と言う様な事を書いていた
今回の名簿に 俊介という名前を見つけて
嬉しくてついメッセージを送ったと
自分は最初研修を断るつもりだったけど
出れる人がいなくて やむなく今回出席して
そして自分も伶奈さんの名前を見つけて 嬉しく思った
そんな事を書いた
ここで偶然に出会った事も何かの縁なので お互い頑張りましょうという事で
その日のメールを終えた
それから週二回のパソコン会議が少し楽しみになった
６人のメンバーでは業務について議論しているけど
時々伶奈さんから自分にだけ個別のメッセージが来る
自分もそれに返信した
業務用の画面では真面目に議論しているけど
二人だけのメッセージでは愚痴を言ったり
早く帰りたいとか 今日の夕飯は何を食べようかなと
他のメンバーには悪いけど そんなやりとりをしていた
そんな支部を繋いだパソコンでの会議も一ヶ月で終わりとなった
後はこのプロジェクトも一旦解散する
会議は終わったけれど伶奈さんとのやりとりは続いた
今までは半分以上が仕事の話題だったけれど
そのうちプライベートの話題が多くなってきた
伶奈さんには彼氏がいるらしい （その美貌だし もちろん居ると思った）
自分の事も聞かれたけど 前の恋愛で痛い思いをしたので
今は時々ご飯に行く人がいる位で恋人は作っていないと伝えた
伶奈さんは激しい恋に落ちたことが無いと言っていた
プロジェクトが解散したあたりから
個人的なやりとりがかなり多くなってきた
伶奈さんの事が気になり始めたのも
この頃からだった
彼氏がいるのに 恋に落ちたことが無いという事も
気になった
【ＭＯＤＥＲＮ ＳＯＵＬ】
S.E.L Flowered Tears (Michele Chiavarini & DJ Spen Extended Flower Mix) （2017）
Engineer [Vocal Recording] – Toni Economides
Executive-Producer – S.E.L, Sean Spencer
Keyboards – Michele Chiavarini
Mixed By, Arranged By – DJ Spen
Producer, Drums – DJ Spen, Michele Chiavarini
Vocals – S.E.L （Emma-Louise Bucknor）