仕事にも多少慣れてきて

現在はチームリーダーとして女子をまとめている

穂高 裕斗(ほたか ゆうと)35歳

3年付き合った彼女と別れたばかり

 

今年配属となった西山 若菜(にしやま わかな)24歳

が新たにチーム員に加わった

 

メンバーは女子4人と自分の5人となった

新人歓迎会も終わって ぎこちなかった雰囲気の若菜も

みんなの輪に加わって話すようになってきた

 

毎朝のミーティングで業務の進捗状況を報告してから

みんなが仕事を開始する

 

女子のチームは仲が良すぎても 悪すぎても良くない

かといって堅苦しい雰囲気にもしたくない

本当に神経を遣う

幸いチームの雰囲気も良くて ときおり話す自分の冗談にも

みんなが笑ってくれる

自主的に仕事をするのでみんな優秀だった

 

仕事の事を聞きに来ていた若菜も最近は

自分で目標を決めて進捗まで調整出来るようになった

 

そういえば若菜は歓迎会の時に付き合っている彼がいますと言っていた

ここ最近 残業をしているから デートに支障はないのかなと余計な心配をしていた

 

ある時 廊下で若菜とすれ違った時

 

 「裕斗さんって漫画読みます?」

 

と聞かれた

 

 「特別好きな漫画は無いし 漫画の単行本も読まないよ」

 

そしたら

 

 「私 大好きな漫画があるんです これ絶対に面白いから 読んでほしいです」

 

と自分に勧めてきた

 

 「明日全巻持ってくるので 読んで下さい」

 

読まないと言っているのに ちょっと強引と思ったけど

 

まっ 仕方ないか そして 次の日に漫画を借りた

 

そしたら意外に面白かった

 

そのことを若菜に伝えたら

 

 「私たち気が合うのかもしれませんね」 と

 

そしたら

 

 「裕斗さんとドライブしたいなぁ」

 

と言って来た 漫画同様 グイグイ来る感じ

 

 「平日だから 遠出は出来ないよ」 と言ったら 「近場でいいですよ」と

 

若菜は身長が170センチ弱で かなり高い 学生の頃はバスケットをやっていたらしい

 

スタイルもいい

 

仕事が早く終わった平日に若菜の家の近くまで迎えに行った 

 

助手席に座った若菜の私服姿は会社とは別人だった

 

口紅の色も変わっていた

 

ミニスカートで隣にいるから目のやり場に困った

 

道路の街灯が口元を怪しく照らし 白い肌がオレンジ色に染まっていく

 

車内に甘い香りがほのかに漂って来た

 

 

 

若菜の好きな漫画の話が一通り終わった後

 

少し 沈黙が続いた その後

 

「一人目の男性より二人目の男性の方がいろんな意味で」

 

「熱くなれるって先輩が言ってたんです」

 

「それ 分かるような気がします」 

 

「私 人を好きになると 感情が止められないんです」

 

「今の彼とは冷めてきました」

 

 

そして しばらく車を走らせていたら

 

カチッと シートベルトを外す音が聞こえた

 

 

運転している自分の肩に若菜はもたれかかってきた

 

その時 ワイシャツにファンデーションがついたと思う

 

ハンドルを握っている手に

 

若菜の手が重なり

 

細い指を自分の指に優しく絡めてきた

 

若菜が何か囁いてきたけど 声が小さくて 何を言っているのか

 

最初わからなかった

 

 

 

 

 

帰りは若菜の自宅まで送って行った

 

車から降りる時に

 

ねぇ と キスを求めてきた

 

 

家に着いたのは12時頃だったと思う

 

明日も仕事だ 早く寝ないと

 

シャワーを浴びる前に洗面台の鏡を見たら

 

自分の顔にもファンデーションが付いていた

 

耳元から うなじ 口元には

 

口紅の跡も付いていた

 

シャツを脱いだら

 

胸元に赤いマークもいくつか

 

若菜の香水がまだ漂っていた

 

 

その夜はぐっすり眠れた

 

 

 

次の日 会社に行って

 

いつものように若菜にあいさつをしたら

 

伏し目がちに挨拶を返してきた

 

 

 

 

【SMOOTH JAZZ】

Annekei - Brother (2006)

Annekei

1981年デンマーク生まれのシンガー・ソングライター。2002年に単身ニューヨークに移り、ライヴ・ハウスに出演して本格的な活動を始める。2003年アポロ劇場のアマチュア・ナイトでファイナリストとなったことがきっかけで、全米の話題を集めた。