誰にも気さくに話しかけられて、ユーモアがあって、盛り上げられる人は『コミニケーション能力が高い』ってずっと思ってたけど…刑務所に来て色々な人を見ている内に「いや…これって違くないか?」と感じるようになりました。
刑務所も外と同じで話が上手い人、苦手な人がいて、何人かで話していると、大体『いつも中心で喋っている人』とそれを『聞いている人』という形が出来上がっています。
初めの頃は、毎回中心で話している人に対し特に何も感じませんでしたが…ふと、ある時気づきました。
「この人は永遠にSpeakなんだ」と。
話し手としては面白く、場を盛り上げられるし、その能力は凄いと思います。
ただ、そのタイプの人たちの共通点として…『他人の話を聞けない』もっと正確に表現すると、『聴いて、質問ができない』のです。
他人の話を聞くのは面白いし、勉強にもなります。でも、人って他人の話を聞く以上に…『自分の話を聞いてもらえた時に喜びを感じて、幸せな気持ちになる』と思っています。
話を聞いてくれる事は『自分という存在』を理解しようとしてくれているわけで、受け入れてもらえて、認められる感覚は特別なんじゃないかと。
これは結婚している夫婦にも言える話で…付き合う前や付き合っている時は色々話をしてくれて、一緒にいる時間を楽しませてくれる男性に惹かれる女性は多いかもしれません。
でも…結婚して子供が生まれた後に『男性に求められる能力』は変わる気がして、子供が生まれると男性も勿論ですが、女性の方が産後の体調や母乳などの肉体的な変化をはじめ、圧倒的に生活が激変するはずです。
小さな子供から片時も目を離さず、掃除や洗濯、食事、買い物を行い…夜中に夜泣きで何度も起こされ…
いくら男性が育休をとっていても、女性の負担は本当に大きいと思います。
また、子供が成長すれば「あのね、あのね」とこちらの都合は関係なしに、どんなに疲れていてもずっと話しかけてくるわけで…最初は可愛くても、毎日何十回と続けば…言葉では説明できないストレスや感情に襲われるはずです。
そんな生活が続く中、奥さんの状況を誰よりも知っているはずの旦那が奥さんから「ねぇねぇ」と話しかけられた時に「仕事で疲れているからごめん」とか適当に「へー」と空返事をしたり、逆に「今日、部長が〜」って自分の話をペラペラ喋り始めたら…奥さんは誰に心の内をさらけ出せるだろう…
旦那も会社の仕事で疲れていて、ストレスも絶対ありますが…それは同僚にもグチれる内容で、奥さんが仕事復帰している・してない・専業主婦などによっても状況は違いますが…それでも奥さんの話に一番『共感できる存在』は旦那のはずです。
自分のことを話す以上に、奥さんに対し、子供や仕事の事について「今日はどうだった?」と聞ける人こそ、本当の意味での『コミュニケーション能力が高い人』だと思います。
自分は結婚した事は無いので「現実を知らないくせに、理想を語るな!」と言われればそれまでですが…夫婦と言うとアカの他人であって、『Speak』を何十年も続ければ、子供が成人する頃には、完全に冷めきった関係になっている気がします。
逆にどれだけケンカしても、その都度しっかり『Talk』できている夫婦は、お互いの良い所・悪い所を含めて認め合える関係になれるんじゃないのかな…と。
刑務所と言う特殊な世界ですが、一人の人間として面白い話を一方的にSpeakする人ではなく…相手の話をじっくり聞いてTalkできる人になれるように、少しでも成長したいです。
今回も読んでいただき本当にありがとうございました。
感謝しています。
@懲役25年受刑者