ここには10年以上から無期刑を言い渡された凶悪犯が沢山収監されていて、言ってしまえば日本の『底辺of the 底辺の世界』だと思います。


でもそんな世界でも…ハッとさせられる瞬間は存在し、人として学ぶべき事はそこら中に落ちていると自分は感じています。


とある日、食堂で休憩時間中に役職に就いている古株の2人が揉めた事がありました。

発端は物凄くくだらない事で1人が冗談で口にした言葉がもう1人の勘に触れたらしく、一瞬で顔が鬼の形相に変わってキレてしまったのです。


他の懲役も皆聞いていたけど「そんな事でキレる!?」という内容だったし、キレた方はすぐにプッツンしちゃう事で有名でした。


普通に考えれば一言「ごめん!」で済むような話ですが…キレられた人も普段強めのキャラで…

こんなみんなが注目している状況で「この人は謝るのか…?」と成り行きにドキドキしていました。


すると…その人はすぐに席からパッと立ち上がり「すまん。俺の言い方が悪かった!そんなつもりで言ったんじゃないけど、気を悪くさせたなら申し訳ない」と迷うことなく、はっきりと頭を下げ謝りました。


あまりに素直に謝られた相手は…怒りの矛先を見失いバツが悪そうな顔で「…あぁ、わかった。もういいよ」とその場はおさまりました。


翌日、先に謝った懲役に「昨日の揉めたシーン…何だテメーってキレ返すと思ってました」と言うと「あそこで俺も同じようにキレ返したらあいつ一緒じゃん。それに自分の言い方が悪かったんだし、謝って済むなら年下だろうがいくらでも頭下げるよ」と当たり前の顔をして答えたのです。


この言葉を聞いた時に「この人、格好いいな」って気持ちがスーッと湧いてきました。

刑務所という弱肉強食の特殊な世界において…『相手の下に立つ』ことは口で言う程簡単じゃありません。

ちなみに一連の揉め事を見ていた他の懲役たちは「やっぱ、あいつは異常だし関わりたくねーよ。

それに比べてAさんは器がデカいわ」と口にしていました。


他にも…工場でもの凄く面倒な絡みをしてくる先輩懲役がいて、同じような状況になっている懲役に「あの人、まじで面倒くさいよね」と愚痴をこぼすと「確かに面倒くさいけど…外にいれば仕事の関係でも嫌な人と付き合わなきゃいけない事は沢山あるし、いい練習だと思って頑張ろう」と言われ…

自分のちっぽけさを思い知らされる日々です。


懲役25年と聞けば誰もがとんでもなく長い年月を無駄にしていると思うはずだけど…こんな世界でも学べる事は本当に沢山あります。

他人の良い部分はどんどん吸収して、少しでも1人の人間として成長していきたいです。


今回も読んで頂き、本当にありがとうございました。

感謝しています。

@懲役25年受刑者