刑務所では刑務作業を行う事が全員に義務づけられているので、入所後すぐに配属先の工場を決められます。


懲役の食事を作る『炊事工場』をはじめ、『洗濯工場』『営繕工場』『内掃工場』などの日常生活を回す為の経理系の工場から…外部の業者から発注された製品を作って納品する『金属工場』『木工場』『印刷工場』『雑工場』などの生産系の工場があり、意外に多種多様です。


そして、工場には序列みたいなものが存在し、『経理系工場=格上、生産性工場=格下』の空気があり、更に高齢者や体の不自由な人、精神安定剤を飲み過ぎてボーっとしてる人、懲罰明けの問題児が揃っている『雑工場』が一番下に見られるのが実状です。

ちなみにモタモタしている人が多く集まっているという理由から通称『モタ工』と呼ばれています。


実際、モタ工の作業は、商品購入袋の持ち手用のひもを通したり…ビニール手袋に不良品はないかチェックして箱に詰めるなどの単純作業はがりです。

「こんな作業、一生懸命やっても適当にやっても一緒だろ」と多くの懲役が口にする気持ちも分かるっちゃ分かるし…自分も一日中椅子に座ってこの作業を繰り返してると眠気に襲われ、時間の流れもメチャメチャ遅くて、かなりキツイです。


でも、そこで毎日「かったりーな」とダラダラ作業するより「この単純作業を何十年も繰り返すことになったのは全て自分が犯罪を犯したせい」という事実をしっかり考えて、前向きに働かなきゃだめだな…と思っています。


以前、班長を補佐をするポジションで働かせてもらっていましたが偶然、班長と自分の父親が同い年でした。

そんな班長が毎日重たい材料を運びハーハー息を切らしながら「この角はもっとキレイに折り目をつけて」とか「ひもの長さは7mmから1cmの間にして」と細かい所まで他の懲役に指示している姿を見たら…「この人、刑務所にいながら、ちゃんと仕事にプライド持ってやってて…カッコいいわ!」と素直に感じました。


職員から「この中で作っている物は社会で使われ役立っているんだぞ」と良く言われるけど…頭では理解できても、正直…その部分にはモチベーションは上がりません。

それより、刑務所にいようが『やるからにはきっちりとした物を責任を持って作る』という想いの方が自分は強いです。


結果的にそれが社会の人の手に渡って、役に立つ事に繋がるはずだし…「責任感を持って仕事をするなんて外じゃ当たり前の事だよな」って気持ちでもあります。


とはいえ、刑務所という特殊な世界でモチベーションを保つのは簡単ではないけど…『やる事はやる』という信念を大切に生活したいです。


今回も読んで頂き、本当にありがとうございました。

感謝しています。

@懲役25年受刑者