【タイトル】 TVピープル

【著者】 村上春樹

【出版社】 文春文庫

【発売日】 1993/5/8

【読了日】 2022/7

 

【読んだきっかけ】

本棚整理きっかけで村上春樹さんの本を読み直すキャンペーン中。この本は所持していなかったが(初回読んだときは借用)、今回「パン屋再襲撃」「レキシントンの幽霊」を読み直した流れでまた読みたくなり、図書館で借用。

 

【感想】

前回読んだのは90年代だから20年ほど前になるのか、内容は相変わらず覚えていなかったが、読んだシチュエーションが思い出された。帰省の電車か新幹線の中で、景色に飽きたら読み、読み疲れたら景色を見て、を繰り返しつつぼんやり読んでいた。

 

表題作「TVピープル」

日常自分が見ている世界は、当たり前なものを当たり前として受け取っているけれど、それは本当にそうなのか?誰かが真実をゆがめたり、自分の感覚がゆがんだりするのか?見ていることを信じてよいのか?と終始思わされる奇妙な話。後で書評などを読んでみたいと思った。

 

「我らの時代のフォークロア ~高度資本主義前史」

実話であって寓話、聞き手が語る文章。また、”僕は思うのだけれど” という語り口調だったり、”おそらく” という副詞だったり、フラットで公平に語ろうとする、村上春樹さんの文章の特徴がいろいろ味わえる短編だと思った。

 

「加納クレタ」

こんな話だったけ…?と思うくらい、加納クレタ・マルタ姉妹のイメージが記憶と違っていた。長編「ねじまき鳥クロニクル」にも出てくる姉妹、自分の記憶がごっちゃになっていそう。

 

「眠り」

眠れなくなって17日目になる「私」。悩みながら暮らし、眠りについて図書館で読んだ本をきっかけに、眠れないことを恐れなくなる。眠れない分、起きている時間が長い、つまり、人生を拡大している、と捉える。しかし目を閉じたときの覚醒した暗闇に死を想像し、とはいえ死後の世界がどのようなものであるかわからないことに恐怖を覚える。眠れなくなってから、自分が変わっていくことを感じつつ、何か間違っていることにも気づく。

救われない感覚になるが、読みながら、眠りについて、こんなに深く考えたことはないな、と思った。