【タイトル】 パン屋再襲撃

【著者】 村上春樹

【出版社】 文春文庫

【発売日】 1989/4/10

【読了日】 2022/7

 

【読んだきっかけ】

本棚整理きっかけで村上春樹さんの本を読み直すキャンペーンをしており、再読。

 

【感想】

村上春樹さんを知ってけっこう初期に読んだ本であり、内容は忘れていたものの、表題作「パン屋再襲撃」を読んで、こういう文体や内容が好きではまったことを思い出した。懐かしい。

 

「パン屋再襲撃」

今のご時世なら、夜中にお腹がすきすぎたら、コンビニに行ったり、ウーバーを頼んだりなのかな。そもそもコロナ禍ステイホームの習慣続きで、備蓄食料がそこそこあるのかも。パン屋襲撃のリベンジをはかるなら今、奥さんの破天荒さが面白い。

 

「象の消滅」

・5年位前に英訳を読んだが(The Elephant Vanishes)最後までたどり着けず、結末が気になっていたまま放置していた。今回読み終えて物語の全体像がわかりすっきり。

「僕」は象の消滅を目撃してから、自分の中で何かのバランスが崩れてしまい、おそらくそのせいで外部の事物が奇妙に映る。「何かをしてみようという気になっても、その行為がもたらすはずの結果と、その行為を回避することによってもたらされるはずの結果とのあいだに、差異を見出すことができなくなってしまうのだ」。それでも、物事を便宜的にとらえながら、日常が進む。

そう言われてみると、物事なんていつも便宜的にとらえているのかもなと、少し考えさせられる。

・村上春樹作品でおなじみの、「わたなべのぼる」さんに初めて出会ったのは、この作品かもしれない。

・渡辺昇・・・象と一緒に消えてしまった飼育係。63歳。

 

「ファミリー・アフェア」

・家族の、近いゆえの、イライラ感が面白い。「僕」の適当さが、家族(とくに妹)をさらにイライラさせる。面白く読んでいたが本当にイライラしてしまった。

・渡辺昇・・・コンピューター技師。妹の婚約者。服の趣味が悪い。

 

「双子と沈んだ大陸」

・番号付きのトレーナーを着ている双子といえば、「1973年のピンボール」の続きだな、別れてから元気にしているのかな、と懐かしくなった。

・渡辺昇・・・「僕」の共同経営者。

 

「ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界」

・このタイトル、目的とするところは、最後のページで、なるほど…と思わされる。「あらゆる意味のある行為はその独自のシステムを有している。風が吹いたって吹かなくたって、僕はそんな具合に生きているのだ。」

・伊坂幸太郎さんの「モダンタイムス」で、物語を通して語られている、”そういうことになっている”  を思い出した。システムは、物事に惑わされず自分らしく生きられるためのシステムがいい。”そういうことになっている” 世界ではなく。

 

「ねじまき鳥と火曜日の女たち」

・言わずと知れた、「ねじまき鳥クロニクル」の元となる、それに向けた物語。

・ワタナベ・ノボル・・・行方不明になっている飼い猫の名前。「僕」の妻の兄の名前を冗談でつけたもの。歩き方や眠そうなときの目つきが似ているから。(「僕」の妻は、猫にその名がついていることを、おそらく知らない。)

 

読み終えてみると、どの話も興味深く、気に入っている作品集。