【タイトル】 回転木馬のデッド・ヒート
【著者】 村上春樹
【出版社】 講談社文庫
【発売日】 1988/10/15
【読了日】 2022/6
【読んだきっかけ】
本棚整理きっかけで村上春樹さんの本を読み直すキャンペーンをしており、再読。
【感想】
”はじめに” で語られているとおり、この小説は、小説であって小説ではない。村上春樹さんが、出会った人から聞いた話、つまり原則的に事実に基づいて書かれているとのこと。
他人の話を聞けば聞くほど、我々はどこにも行けないという、ある種の無力感に捉われる。人生は自分で決められるけれど、メリーゴーラウンドのように、自分で規定した世界を一定スピードでぐるぐる回り続け、仮想の敵とデッド・ヒートを繰り返すようなもの。一定スピードで回り続ける中、ある場合は、奇妙な歪みが生じる。事実が奇妙だったり不自然だったりするのはそういうことではないかと、語られている。
「タクシーに乗った男」
とある画廊のオーナーが語った話。生活にゆとりはなく、決して上手い絵でもないのに、自分のために買わずにはいられなかった絵。そして現実に起きた、奇妙で信じがたいすてきな出来事。”人は何かを消し去ることはできない、消え去るのを待つしかない” というオーナーが得た教訓も、すてきだ。
「プールサイド」
人生の折り返し点を定めた人の話。35歳の誕生日に、今日が折り返しだ、と定める。そして、人生の”あちら側” にいることを意識しながら過ごす日々。読み終えて一番に、続編を読みたい、と思ってしまった。事実であることを忘れ、完全に小説の感覚で読み進めてしまい、結末が気になってしまった。小説としても読んでみたい題材。