【タイトル】 生きベタさん

【著者】 釈徹宗 細川貂々

【出版社】 講談社

【発行日】 2022/3/31

【読了日】 2022/6

 

【読んだきっかけ】

タイトルに惹かれて読んでみたもの。”生きづらさ”はきくけど、”生きベタ” はきいたことがなかった。

 

【感想】

”「私は自己肯定感が低い」という擬態” (自分を下げるのは、周りの期待を下げさせるための作戦)・・・そうそう、何かするときに自分はできないと言いあうやりとり、ビジネス上でもよくある、あの違和感。自分は逃れたい作戦だと思っていたけど、失敗を恐れる社会状況でもあるのか。

 

”他者観察は自己分析につながる。そして、自分と違うタイプの人のマネをしてみると、今まで自分の中で発達していなかった部分を試してみることになる。” それでだめならやめればいいし、できることが見つかったり楽しかったりしたら、ラッキーだな。

 

”漠然とした不安、悩みを言葉にしてみることで、前に進んでいけるのではないか。すぐに不安が解消されるわけではないが、日々をどうにか送っていくことができれば、それで良いのではないか。” よい心持ちだなと思った。

 

「非定型発達」という言葉を初めて知った。日本人の20%ほどを占めるそう。空気が読めない、ニュアンスが読み取れない、など。

以前、仕事で、上手く会話が進まないことがあり、なんで進まないのだろうと考えたら、話している途中で、捉えた言葉に対してすぐ直球の返事をしてくるからだ、と気づいたことがある。文脈が捉えられない、行間が読み取れていない。本筋をわかりやすくするために「例えば」と前置きして例え話を始めると、引っかかった言葉にすぐ質問してきたり、そんなことありえない、と例え話の位置づけがわからない様子。気づけば、その人といろんな人の会話が、途中から喧嘩調になるのが常。そんなことを思い出した。

「非定型発達」の人が「定型発達」に変わることはない。知らなかった。

 

”誰でも、生きづらさはある。複数のコミュニティに所属すると、自分にとって良い居場所を選べて、生きづらさを減らすヒントも得られるかもしれない。” わかる気がする。時と場合によって、居場所を選ぶのもありだと思う。また、そうやって身軽に生きているだろう人も見かける。

 

ネガティブ・アプローチをしてくる人に振り回されないようにするトピックでの、お釈迦様が罵倒されたときの話、面白かったし、自分もそうしたい。

 

”生きづらさを軽くする手立て” の中で語られていた下記が、自分にとって新鮮で面白かった。

・”自分のなかの別な顔を発達させる” 自分の中の、大人、子供、男性、女性など、いろんな役割が人生を豊かにする。

・”問題を横にズラしたり、自分をだましたりする” 思い通りにならない事態を、時には観点や立ち位置をスラしながら、だましだまし歩く。・・・仕事の課題解決など、1回目の打合せではみんなで悩みすぎて、ただただ意味のない会話になってしまったけど大笑いして元気でたことなど、思い出された。人生も、そういうものか。

 

仏教のデフォルトの考え「人生は思いどおりにならない」それを引き受けるための、心と身体を調える技術が仏教の手法。

諸行無常、今なすべきことをなす、など、仏教からくる考えも興味深かった。

不具合があってもすぐ直さなくていい、利他主義の考えなど、「人生は思いどおりにならない」前提に立つと、焦る必要はない、と思える。