【タイトル】 アフターダーク

【著者】 村上春樹

【出版社】 講談社(講談社文庫)

【発売日】 2006/9/15

【読了日】 2022/5

 

【読んだきっかけ】

本棚を整理していて、この文庫が2冊あることに気づく(確か家族がもう1冊を入手)。出版された頃購入したものの忙しく集中して読めなかった記憶あり内容もまったく覚えていなかった。手に取り、冒頭少し読んでみたら、静かな夜の描写に引き込まれ、そのまま読み進めることに。

 

【感想】

小説タイトルの一部であり、また、作品中に登場するジャズの「ファイブスポット・アフターダーク」。”高橋” がトロンボーンを始めるきっかけになった曲。”マリ” もフレーズをきいて、その曲を知っているという。自分は知らない曲だなと読み進めていたが、中盤くらいで、タイトルにもかかわるし、どんな曲か知った上で読んだほうが深みがあるかなと思い、チェックしたところ、自分も知っている曲だった。いつどこで知ったのかわからないし、タイトルと結びついていなかったものの、よく知っている曲だったから、自分が持っているジャズ曲集にでも入っていたのかな。好みの曲調。

 

物語は日付がまわるころ、23:56から始まり、翌朝6:52頃に終わる。

アフターダーク。暗くなってから。

 

昼と夜。東京のとある夜。家にいたくない人が時間をつぶすファミレス。オールナイトでのバンド練習。システム担当の深夜残業。夜営業するホテルとそこで起きる事件。深夜営業のコンビニエンスストア。

表と裏。表社会、人から逃げて身を隠すように働くホテル従業員。深夜残業をしながら悪の行為にも手を染め、家族とすれ違うように生活サイクルをつくる会社員。

明るい姉と暗い妹。姉は明るく表舞台で輝き、妹は自分は暗いと思っている。

こちらの世界と向こうの世界。眠り続ける姉。眠り続けながら向こうの世界で、別の現実とシンクロしているのか。

やってきたこととこれからやること。トロンボーン奏者を辞めて、これから法律の勉強を始める。交換留学生として北京で暮らす。

・・・など、物語の中に、いろんな対比があったと思う。

登場人物たちの「ひとりの人間が闇の世界に吸い込まれていくのはやりきれない光景・助けたい」「人はしっかりした地面に立っているようで、すとんと落ちることがある。薄暗闇みで生きていく中、いろんな記憶が燃料になる。」「物事は明るい暗いだけでなく、陰影という中間地帯がある。それを理解するためには時間が必要。」など、両極端だけじゃない、救いのような、やさしさのようなものに、考えさせられる。

 

村上春樹さんの作品の再読として、鼠三部作の次に、アフターダークを読む流れとなった。当たり前だが雰囲気が違い、語り口調も違う気がして、別人の作品を読んでいる感じがしたが、文庫の裏表紙にも「新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編」と書かれていたことに最後気づく。