ミュンヘンのバイエルン国立美術館の展示から。リーメンシュナイダーのヨハネと悲しむ女たち。『Tilman Riemenschneider Die werke im Bayerischen Nationalmuseum 』(2017)より概要。(斜線部)

 キリストの磔刑図からのふたつのグループ。ライムウッドの上に上塗りの無いオリジナルな彩色が施されている。3人のマリアとヨハネの高さ127cm。右側の兵士たちは高さ129cm。局所的な損失が幾つかある。左側のグループではマリアのローブの裾と基礎部分、左側では兵士の武器等。

 

 失われた部分があることはこれを読むまで気付かなかった。この本の画像を見ると確かに、左の兵士たちの足元に見えている岩のような物が、女性たちの足元にはない。美術館ではガラスケースの足元の暗闇に沈んでいた。

 

 来歴はエッティンゲン=ヴァラーシュタイン、ハールブルク、時にはマイヒンゲンの貴族たちのコレクション。おそらく1812年頃から貴族の所有になり、もとはおそらくローテンブルク・オプ・デア・タウバーにあった。1994年にシーメンス芸術財団・ドイツ連邦共和国などの支援により取得。

 

以前にもどこかで書いたが、私がこの彫像を見るのは二度目。ハールブルクのお城のコレクションだった時にガラスケースに入れられた作品を見ている。こんなところにリーメンシュナイダーの彫像があるとは! と驚いた記憶がある。ただその時は、リーメンシュナイダーといえば「無彩色」という固定観念があって、この彩色に違和感を覚えたものだ。今回のようにその美しさやリアルな造形に感動するということは全くなかった。むしろ本当にリーメンシュナイダーの作品?と疑うような気持ちさえあった。見る目の無さは恥ずかしいが、ともかくも作品を見る目は、私なりにかなり向上したようだ。ミュンヘンの美術館のコレクションに入ったのは、私たちが訪れた数年後だったようだ。

 

 左側のグループは洗礼者ヨハネとキリストの母マリアの姉妹?(マリア・サロメ)。

右側には7人の兵士たちが描かれており、正面の3人は全身像で。後ろの兵士は帽子の一部のみで示されている。右から3番目の兵士のヘルメットなどの古代的な要素はイエスの敵対者を否定的に特徴づけ、遠い過去の出来事であることを表わすために意図的に用いられ、左側の兵士の尖った帽子は彼がユダヤ人であることを示す。

 

右側のグループの人数が7人と書いてあることに愕然とした。

自裁に見るとこんな感じ。全身が見えているのが3人、その間から頭だけ見えている兵士が二人、合計5人だと思いこんでいたのだ。さらにその後ろに二人も隠れていたとは!

 


 

 図版をよくよく見ると、一番左の兵士の右隣りに帽子の影。美術館の薄暗い空間で正面から見たとき全く気付かなかった。 


 
一番右側の兵士の帽子の後ろの角のような物は、別な兵士のヘルメットの突起で、図版で見ると色も赤い色だった。

 
当時の教会の中で、この後ろ側の兵士のわずかなヘルメットの影まで見分けられていたのか疑問だが、7人の兵士を表わすとは、その人数に何か意味があったのかとも思う。それにしても恐るべし、リーメンシュナイダーの技術。
 実際に見るという体験はかけがえが無いということは何度も書いたが、研究者の情報もまたかけがえのないもの。