バイエルン国立美術館の聖バルバラについては、本でも書いたけれど、この美術館の本の情報をもとにまた書いてみよう。

ライムウッド。保存状態はとても良いが、左手の親指は付け替えられている。1890年にバート・キッシンゲンのカール・ストライトコレクションから購入された。聖杯に直接触れないように、ベールに包んで聖杯を持っている。彼女が閉じ込められたという塔は省略されている。彼女が誰かということについては疑いようがない。胸の布に名前が記してある。先がとがった靴の下には、泥で汚れないように木の靴を履いている。

 わずかこの数行で、バルバラの像について、自分が見落としていた細部がたくさんあったことに気付く。


まず、ベールで聖杯をくるむように持っていたのは聖なる存在に直接触れないためたったということ。左手の親指をよく見れば、確かに他の指の優美さとは差がある。そして胸元の布に、その名が彫られていること。確かにBA RBの文字が見える。


 バーバラは頭にベール のついたターバンのようなフード、 いわゆるWulsthaubeをかぶっている。ヴルストハウベとは、ソーセージのヴルストかと思えば、ソーセージはwurst、こちらのヴルストと綴りが違う。膨らみという意味のようだ。ネットにはたくさんこのWulsthaubeの作り方の動画が載っている。羊毛や綿や麻を布の管上のものに詰めてそれを組み合わせて飾りとするもの。15,6世紀に南ドイツの女性たちが被っていたもの。

 やはり知識は必要だ。このハウベとバンベルク大聖堂の女性たちのハウベが似ているところから、同じ頃に作られたのだろうと推測される。

 

 ヴルストハウベの一例としてインターネットに画像が載っていたもののなかから、クラナッハの肖像画をあげる。これは立派な被り物であるが、どうも重そうである。これに比べると、バルバラの髪型のほうが洗練されている。

Portrait of Anna Cuspinian(1502)   Lucas Cranach the Elder  (1472–1553

)Museum collection Am Römerholz