ミュンヘンを訪れたのは、リーメンシュナイダーの作品が多数収蔵されているバイエルンミュージアムを訪れるためだった。現在の建物はガブリエル・フォン・ザイドルの設計で1900年完成。宮殿のような建物だが、周りが広々していて威圧感がないため心地よい印象。

 

開館前に行ったのだが、人は誰もいなかった。お陰でゆっくりと見られた。ここにはリーメンシュナイダーの彫刻が一つの部屋に集められている。作品のいくつかについては「赤い屋根の街に ひそやかに」に書いたので、そのほかの作品に触れてみよう。

大ヤコブの彫像。

キャプションがドイツ語と英語で書かれている。それによれば

聖ヤコブ・エルダー ティルマン・リーメンシュナイダー作 1510年ごろ、リンデンバウム

おそらく以前は彩色されていた。サンティアゴ デ コンポステーラの使徒の墓への巡礼により、聖ヤコ ブの像に対する大きな需要が生じた。彼自身も巡礼者と して描かれることが多い。しかし、この像からは巡礼者の杖がほと んど失われており、帽子の帆立貝も完全に失われている。 リーメンシュナイダーの通常の作業習慣により、この像は非常 に平坦になるように設計されている。それにもかかわらず、 その記念碑的な効果は印象的である。

とのこと。

 

 

 

 

 

 

この像も彩色されていたとあるが、彩色されていた像から受ける印象は全く違うものかもしれないがその姿はほとんど想像がつかない。この無彩色の像はよくできていると思うがあまり響いてこない。すでにある型をなぞったもののように感じる。

 ローゼンフェルトによれば、ヴュルツブルクマリア礼拝堂の使徒たちと同時期で、顔は大ヤコブ、姿勢や衣装の装飾は小ヤコブに似ていて、おそらく共通の見本を元に作られたのだろうと言う(リーメンシュナイダーとその工房、p142)。

マリア礼拝堂の小ヤコブはヴュルツブルクのマインフランケン美術館所蔵なので、実物も見て写真も撮っていた。かなり傷んでいる。

 

 

マリア礼拝堂の大ヤコブは、大聖堂美術館の所蔵で、これは見たけれど、写真はないし、よく覚えていないのだ。

 見本を元に作ったとは知らなかったが、知らずに見ても感動を起こさないのはなぜなのだろうと思う。ミュンヘンの街の建築でも同じことを感じたけれど。一見同じようでも違う、人の技の不思議さ。

 需要が多かったという巡礼姿の大ヤコブ像。ペテロやパウロやヨハネのように聖書に残る逸話も少ないし、心情を表すのも難しいのかもしれない。