町田市立国際版画美術館で開催中の『自然という書物 15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート』展の第2章第1節「想像から経験へ」より。コメニウスの『世界図絵』。これも良く知られている書物で訳書も持っているが、実物を見たのは初めて。思いのほか小さく170×105×30mm。

    Orbis pictus by Comenius in four languages, chapter on flowers

数字が振られていて、それぞれの花の説明が書かれている。

「花の中で最もよく知られているものとは、すみれ1,ヒヤシンス2、すいせん3,」(J.A.コメニウス、世界図絵、 井ノ口淳三訳 p54)

コメニウスは、1592年にモラヴィアに生まれたプロテスタントだったが、宗教的弾圧のためにポーランドに亡命した。宗教改革、その後の三十年戦争の惨禍のなかに子どもの姿を見たコメニウスが、子どもの教育の重要性を感じ子どものために作った絵本が『世界図絵』である。

 

以前ブログで書いたが、このころは宗教改革や三十年戦争のことも良く知らず、そのあたりはさらっと書いている。宗教改革をめぐる争いは悲惨なものであり、多くの人々が国を追われたり、亡命したりした。そのうちの一人がコメニウスであったわけだ。何気なく読み飛ばしていた亡命という言葉の背景の重さを思う。

図録に載っているもう一枚はアルファベットの発音を動物の出す音によって示しているというもの。

訳書によれば「からすはアーア―なきます。ひつじはベェーエーエーとなきます バッタはチーチーはねをこすります。」(翻訳書、p22)という具合でなかなか楽しい。