町田市立国際版画美術館で開催中の『自然という書物 15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート』展の第1章第4節「自然の蒐集―動物」より。アンドレア・アルチャーティの『エンブレム集』1589年刊。

 前回のブログで、ゲスナーの『動物誌』の解説にはエンブレムについても記述があったということを書いたが、アルチャーティのエンブレム集はマリオ・プラーツがたびたび触れている。図像をいくつも見たこともあったが、本当の書籍を見るのは初めて。これは170×112×50㎜。と思いのほか小さかった。ゲスナーのように自然科学的に正確を期すという意図が希薄だから? この小さなサイズの本は文庫本のように、携帯して繰り返しぺ―ジをめくるのにちょうど良さそうだ。これも実物を見たからこそ感じた。書物としての利用法も様々だったに違いない。

 この本は各国語に翻訳され版も重ねたものだが、展覧会に出展されたのはパリで1589年に出版されたもので、インターネットで探したが見つからず。以下の画像はOmnia d. And. Alciati emblemata 1566、リヨンで出版されたものから。pubulic domain

 

 

 

アウグスブルクで1531年に出版された初版。

 

Alciato 1531 Augsburg

 

図録によれば、この兜に蜜蜂が巣を作っているのは「戦いから平和が」というモットー(標語)、「戦いの道具を巣に変えて蜜をもたらす蜜蜂は、その秩序ある行動が人間の理想的な社会と比されていたことも手伝い、平和の象徴とみなされている。」(図録 p51)

エンブレム集は、文学的ジャンルの書物だろうが、それでも蜂を実物に近く描こうとする“つもり”が見える。足の数が怪しいが。そして兜の違いもおもしろい。兜には全く詳しくないので思いつきだが、初版のほう、横に十字が見えるので十字軍の兜だろうか? 1566年の兜の方は、いわゆる紋章のクレスト(兜飾り)のようにも見える。