芸術館のオルガン・レクチャーコンサート。

紹介された教会で唯一オルガンの演奏を聞いたことがあるのはノートルダム大聖堂。10年ほど前のクリスマスの頃にパリを訪れた時の写真。火災の前である。

大聖堂前の広場に大きなクリスマスツリーがあった。確か夕方近く。

 

聖堂の側面

 

後陣のフライングバットレス

 

この大聖堂のオルガンもカヴァイエ=コル制作。2019年の火災でも焼けなかったらしいが。

Organ of Notre-Dame de Paris photo by 

Eric Chan

CC-BY-2.0

青い薔薇窓を背景にした美しいオルガン。平面図を見た限りでは正面ファサードの薔薇窓を背景にするという絶好の位置にあるようだ。

 コンサートでは、この大聖堂でオルガニストを務めたルイ・ヴィエルヌ(1870-1937)の〈ヒンクリーの鐘〉という作品が演奏された。彼が演奏旅行でイギリスを訪れた際、夜に響き渡る鐘の音(カリヨン)に発想を得て作曲された作品。カヴァイエ=コルのオルガンは、一台でオーケストラのような響きを出す交響的オルガン。オルガンで鐘を表わすのもまさにぴたりとはまる感じ。

 

 次第に芸術館のエントランスホールが,小さな教会空間のような錯覚に陥る。先ごろ亡くなった磯崎新の設計。空間構成は,アーチこそないものの縦に三分割されて、アーケード・ギャラリー・クリアスクリーンのゴシック建築を参照していることは確かだろう。天井はさすがにヴォールトではなくバシリカ風だが。私が座っていたのは、ちょうど2階のギャラリー部分だった。照明の作る三角形の光と影がシャープ。ただオルガンコンサートだからだと思うが,オルガンに当てた照明は明るすぎて陰影がなく,ホール全体の計算された照明からすると,ちょっとそぐわない気もした。コンサートでオルガンやオルガニストがよく見えないのも、不満に思う人もいるだろうが。

 

ノートルダム大聖堂のオルガンで演奏したCDもいくつも発売されている。

このCDは2013年の録音で,オルガニストはオリヴィエ・ラトリー。レクチャーコンサートの講師梅干野安未さんの先生(パリ国立音楽院オルガン科)だそうである。