Riemenschneider in Rothenburg: Sacred Space and Civic Identity in the Late Medieval City, Katherine M. Boivin著,Pennsylvania State Univ Pr 2021/5/2 第2章聖血祭壇の続き。

プレデッラの上,翼のあるShrine(※筆者註:聖櫃、厨子などと訳されている。聖なる像や遺物を納める入れ物,箱と考えれば良いか。)

 

 

Rothenburg ob der Tauber, St. Jakob, Helig Blut Retabel  Tilman2007  CC BY-SA 4.0 Date and time of data generation    15:06, 24 April 2016

 

この写真でわかるように,両脇の翼扉には開閉できるようになっている。中央部分にのみ背景がガラス張りで,ゴシック様式の窓になっている。上掲書には,バクサンドール(Baxandall、Limewood Sculotor、188-90)が最初に研究したように、この窓が照明効果を上げ、始めは南の大きな窓から(祭壇に向かって左側)、一最終的には後ろの窓からの光がコントラストを生み出し、特に朝と午後遅く劇的に見えるとある。 ※筆者註:バクサンドールの著書では,「南東からの朝の光を最大限に活用している。」という記述がある。

上の写真は午後3時のもの。ただ自然光でとったものかどうかは分からない。こればかりは、実際に聖堂を訪れて,朝の光,午後の光と比べて見なければわからないだろう。

 

 さて、私自身この祭壇を実際にみたのはかなり前になるのだが,記憶にある像は,こんなに明るくはなく,もっと暗いものだった。いったい何時ごろ見たのかは覚えていない。そこで日本語で書かれているリーメンシュナイダー関係の本を読み直し,この祭壇の光の具合について書いてあるものはないかと調べてみた。あったのは一冊だけ。言葉を費やして文を書いても,対象そのものを見て書くというのは,難しいようだ。その一冊、『リーメンシュナイダー その人と作品』(杉田達雄、水声社、2017年)から引用する。

「さてこの『聖血祭壇』であるが、これはステンドグラスを背景に,逆光線でみるように配置されている。従って、少し離れてみると、作品が褐色の故、全体がやや暗く。それぞれの顔が見分けられないほどであり、順光線でみるのが本来ではないかと考える向きもあろうが、近くによってみると、背後のステンドグラスを通った光が祭壇の両翼から漏れて、淡やかな光影の醸し出す微妙な陰影を映し出し、その効果は絶妙であると私には思えるのである。」(p69-70)

 

 改めて逆光で,像が暗い写真を探してみた。よく見える明るい写真をつい選んでしまっていたが、実際に見た感じはこんな感じだったと思う。

Altar of the Holy Blood (Holy Blood Altarpiece)  photo by Hiroki Ogawa CC-BY-3.0