Riemenschneider in Rothenburg: Sacred Space and Civic Identity in the Late Medieval City, Katherine M. Boivin著,Pennsylvania State Univ Pr 2021/5/2 第2章 「聖ヤコブ教会の西端」

ローテンブルクの現存する聖ヤコブ教会は、3期に分けられて建設された。最も古い部分が、東内陣で建設期間は1303年から1350年頃と、おおよそ47年間。その後20年ほど経過して、次に建設されたのは身廊部。建設期間は1373~1422頃で、これもおよそ50年かかっている。その後30年ほど経過し、最後に建設されたのが今から述べる西端部。身廊部の建設から長い時が経過したが,いざ着工されると、建設期間は1453年から1470年で、20年に満たない。それまでに比べればとても早い。市の「聖血の遺物」に関する“奇蹟”の宣伝の力も大きかっただろう。この西端部分は、他の部分に比べると複雑な空間構造を持つ。西のメインチャペルは,トンネルアーチ型の通路の上にある。

Rothenburg ob der Tauber 2012 (22) Soluvo - Own work CC BY-SA 4.0

この図は聖ヤコブ教会を南側から移したもの。この通路がクリンゲンガッセに続き、さらに北上するとクリンゲン門に出る。

 この写真で言えば,聖ヤコブ教会は右側奥から建設されていったことになる。この通路をさらに進むと、左側に上部がアーチ状のドアが左側に二つある。この写真では黒い影になっていて良く見分けられないが。

Rothenburg ob der Tauber Klingengasse Heilig Blutkapelle Durchfahrt photo by Tilman2007

CC-BY-3.0

もう少し通路に近づくと、はっきり入り口が見える。

Rothenburg ob der Tauber, St. Jakob, Durchfahrt 20161203-002

反対の方向の北側からアクセスした写真。ドアの形状がよく見える。

Rothenburg ob der Tauber, St. Jakob, Durchfahrt 20161203-001 photo by Tilman2007

:CC-BY-SA-4.0

このドアを入ると、Heiltumskammer 教会付属宝物館 がある。ドアが二つあるのは,入り口と出口で,人々がぐるっと循環することが想定されている。この通路と、Heiltumskammerは教会の外からしかアクセスできない。

 

下図は100年以上前の古写真。このトンネル通路を北側から見たところ。広い通りがKlingengasse (Rothenburg ob der Tauber) 教会の全体が写っていないのでわかりにくいが、北側から写真をとると,聖ヤコブ教会の西端しか映らない。

Photochrom Print Collection 1890年と1900年の間 パブリック・ドメイン
 Feuerleins bow windows, Rothenburg (i.e. ob der Tauber), Bavaria, Germany
 現代の写真 カラーなので明るい感じがするが,聖ヤコブ教会のトンネル通路は全く同じこの通りを跨いでいる。

Rothenburg ob der Tauber Klingengasse 12, 13 und südl.-001 photo by 

Tilman2007

CC-BY-3.0

 

このような通路を何と呼ぶか,上の写真のタイトルはDuruchfahrtとなっている。ほかにDuruchgangなどという語もあるらしいが、著者の Katherine M. Boivinはpassage way と呼ぶのを好むという。パサージュと言えばベンヤミンだろうか? 著者の意図がどこにあるかはわからないが,教会と市の密接な関係を表わすものとして重要だということは間違いないだろう。