ブリューゲルの描いた農民の食事について。森洋子氏のおかゆの話は、『ブリューゲルと季節画の世界』(森洋子著,岩波書店、2022年)に出ている。また水分補給も,ゼリンクはビールと書いていたが,森氏は入れ物の形状から水ではないかと推測している。または今日よりもはるかにアルコール度数の低いビールの可能性も否定できないと留保しつつ。(p347)

 

 

 

『ブリューゲルの世界』(マンフレート・ゼリンク著,熊澤弘訳,パイインターナショナル 2020)
《農民の婚礼》より。

Pieter Brueghel the Elder  (1526/1530–1569)  The Peasant Wedding   1566-69.
Kunsthistorisches Museum 

ウィーンにある作品の細部。

この話し合っている奥の男たち。一人は服装から、修道士。もう一人の髭を生やしている男はは剣と足元の猟犬から地元の貴族、おそらく地主とみなされるとある。手前に赤いジャケットの男を配し奥行き感を与えている。

このバグパイプ奏者の視線は飲み食いしている男女で演奏には関心が無さそうとのこと。ブリューゲル特有のユーモア。

 

私がおもしろいと思ったのは,手前で薄い皿に盛られた食べ物を二人で運んでいくその姿。

前を行く赤いジャケットの男、後ろを持つ水色のジャケット,2人ともズボンは緑色。白いエプロンが効いている。それぞれかぶる帽子が緑と赤。またしても後ろ姿の印象的な男たち。その二人の間の若い男が,振り返り一皿、二皿と問っている姿がとても自然なようだが実に効果的に動きにくさびを打ち込んでいる。

 またこの婚礼が開かれている部屋の土壁がまた見事。このような光景がどこまで当時の現実を反映しているのか分からないが,農民たちの楽しみが確かにあったのだろうと思わせる。