六本木サントリー美術館で,智積院の名宝展で長谷川等伯親子の障壁画をみた。平日で観客もさほど多くなく,ゆっくりと見ることができた。展示の順序は『桜』がさきだが,やはり父等伯の『楓』図から。

長谷川等伯 楓図

この青い水の上の紅葉の色が実に美しい。

絵の具が剥落しているところもあるが,完成直後はさぞ華やかだったろう。つい最近東博の国宝展で狩野永徳の『檜図』を見たばかりだが、こちらの方が良いのでは。

 豪放さと繊細さがうまくバランスをとっている。

 

 

若くして亡くなった息子の長谷川久蔵の『桜図』

 Hasegawa Kyūzō  (1568–1593) 日本語: 『紙本金地著色桜楓図〈壁貼付九/襖貼付二〉』より「桜図」   1592

下にすみれやタンポポも描かれている。

背景には柳。ただこの金色の部分,妙に不自然な感じがしたのだが。桜の幹がぶつっと途切れているし,画家本人の意図と異なるような。

画像では見えないだろうが,桜の花びらは胡粉で盛り上げてある。会場で見ると,この白がまばゆい。

 

ほかにも展示品はあったのだが,等伯の十二羅漢図などおもしろいのだが,この2点を見ただけで十分満足した。国宝展の時に書いたけれど,展示として深く掘り下げてあるわけではないが,この二点を見に行くためにだけ足を運ぶ価値は十分にある。

 ふと思ったのだが,この二点はともかく日本画で傷んでいてよく図柄が見えないものもあった。修復して見えるようにするという考えはないのだろうか。CGで良いから、完成当時の作品はおそらくこんな感じというような展示があると楽しいと思う。

また昭和22年に火災で多くの障壁画が焼失したとのこと。白黒写真を見るにつけ、もしこれが残っていたならば,長谷川父子の評価ももっと高かっただろうにと思う。それほど素晴らしい作品。これもCGで作ってくれないかな?