『ブリューゲルの世界』(マンフレート・ゼリンク著,熊澤弘訳,パイインターナショナル 2020)
《怠け者の天国》より。

ピーテル・ブリューゲル  (1526/1530–1569)  怠け者の天国  1567年
52 cm×78 cm アルテ・ピナコテーク

 

「目に見える機知」の章のタイトルの背景として使われている細部。

 

ゼリンクは、ブリューゲルの作品が何世代にもわたって私たちを魅了し続ける多くの理由があるという。芸術的・技法的な素晴らしさ,構図の独創性,主題の普遍性…。そのうちで時代や文化を超えた彼のユーモアのセンスも理由の一つであろうと。「何よりも矛盾を重要な様式的な技として使っている点」を挙げる。「筆者のお気に入りの拡大図の一つ」が上の図の殻をむいたゆで卵の歩く姿。「小さなナイフがささったままそれはうろついている、それはまだ生きているが、これから貪り食べられるのだろう。どんな悪魔的な芸術家がこのようなことを思いつくだろうか。」(p201)

 

ゼリンクの書にはないが、ナイフを刺したまま歩く豚もなかなか。

口を開けていれば食べ物が落ちてくるという怠け者の天国,しかし気怠そうな人物の表情も良し。