『ブリューゲルの世界』(マンフレート・ゼリンク著,熊澤弘訳,パイインターナショナル 2020)より。《死の勝利》
以前書いたものの続き。
骸骨と骨を荷車いっぱいに積んで地獄へと馬を走らせる骸骨。彼の周りのカラス,死の鐘、消えた提灯は全て死を連想させるアトリビュート。馬も骨と皮のみで今にも崩れ落ちそう。荷車にいる男が弾く楽器はハーディガーディ。
崩れ落ちる枢機卿を優しく抱きかかえ地獄へといざなう骸骨。硬貨の入った樽は物質的富が価値がないということの譬えらしい。
ここで,ゼリンクの本からは離れるが,ヤン・ブリューゲルの《死の勝利》という作品がある。
Jan Brueghel The Triumph of Death 1597 Universalmuseum Joanneum
色合いがかなり違う。青黒い空,枢機卿の衣も赤と派手。
同じ部分を見てみよう。
構図はほぼ同じだが、色彩によってこんなにも印象が変わるものか。
どこか現実離れした父の作品より、ヤンの作品の方が怖ろし。