(『ブリューゲルの世界』(マンフレート・ゼリンク著,熊澤弘訳,パイインターナショナル 2020,)より七つの悪徳のうちの《大食》

版画の画像。

Gluttony (Gula) from The Seven Deadly Sins 1558 After Pieter Bruegel the Elder 

Artist: Pieter van der Heyden (Netherlandish, ca. 1525–1569)
Publisher: Hieronymus Cock (Netherlandish, Antwerp ca. 1510–1570 Antwerp)
この版画もブリューゲル,ピ-テル・ファン・デル・クック,ヒエロニムス・コックのトリオが制作した作品。

わかりやすい大食の様子。大食のシンボルであるブタの上に座っ水差しから直接のんでいるのが擬人像か。ゼリンクは,「ブリューゲルの時代には休日や謝肉祭、祭りの多さ(皮肉なことに、これらは本質的には宗教的,教条的なものである)と、それらがもたらした過剰な放蕩と不道徳な行動に関して多くの議論があった。」(p124)と書く。宗教的であるべき祝祭が,過剰な欲望を煽り立てる。その皮肉を描くという姿勢はずっとブリューゲルが持ち続けたもののように思える。

 

上部両脇に,膝をついて装置と一体化してるような巨人や,風車をつけた大きな頭だけの怪物。周りにはいろいろな大食のモチーフが描かれている。このあたりも独創的というよりボス的のようだ。

 

 ところでこういう版画を見て、罪を犯さないようにという教訓になるのだろうか? そんな素朴な人向けではなさそうだ。ラテン語が読めて,この絵の中にちりばめられているだろう諺を読み解いたりすることができる相当な教養人向け?たぶんそういう研究もあるのだろうが、この種の版画が何部位刷られ,どういう人が購入したか,購入したものをどのように飾りどのような思いで見ていたのかを知りたいと思う。