『リーメンシュナイダーとその工房』(イーリス・カルデン・ローゼンフェルト著,溝井高志訳,阪南大学翻訳叢書23,文理閣,2012)より
クレークリンゲン ヘルゴット教会のマリアの祭壇壁

翼扉のレリーフ。 まず受胎告知。

1505 bis 1508. In diesem Zeitraum schuf Tilman Riemenschneider den Marienaltar.

photo by

Holger Uwe Schmitt

CC-BY-SA-4.0

 

この受胎告知はよく見ると単純な構成ではなiい。マリアの書見台が右端にあり本が載っている上に天蓋のようなものがある。台に向っていたマリアに後ろから近づく大天使ガブリエル。ガブリエルのほうに身を捩じって向き合おうとするマリア。なぜ面と向かって描かないのだろうか。そちらの方がよほど自然だと思うのだが。こういう姿勢のマリアの例が無いわけでもないが。視線も合わないし。マリアの座っている場所も、カーペットのようだが,奥の塀は,例の閉ざされた庭の象徴か。ローゼンフェルトは、このレリーフを彫った彫刻師は明らかにマルティン・ショーンガウアーの銅版画を参考にしていると述べている。 舞台設定やマリアのポーズは上で、大天使の向きは下の作品から。

The Annunciation he Annunciation  Engraving メトロポリタン美術館

 Martin Schongauer De engel Gabriël Annunciatie (serietitel) ca. 1485 - ca. 1490   Rijksmuseum

 

マリアが敷いている菱形模様のカーペットや天蓋,奥の塀,花瓶の位置などよく似ていると指摘。(p89)

 レリーフの何となくの違和感も元の絵の構成ならば納得する。ただ重いドレーパリーや,マリアノ独特の弧を描くポーズ,髪型,表情などはリーメンシュナイダー風だが,ミュンナーシュタットの“我に触れるな”のレリーフを作成したマイスターとは完成度が違う気がする。