『初期キリスト教美術・ビザンティン美術』(ジョン・ラウデン著 益田朋幸訳、岩波書店、2000年)を拾い読みするつもりで図書館で借りたのだが,思いのほか興味深く。

エジプトのシナイ山の麓の砂漠にあるアギア・エカテリニ修道院。(聖カタリナ修道院)

 Saint Catherine's Monastery, Mount Sinai photo by Marc Ryckaert (MJJRCC 表示 3.0

人の姿を見ると,この巨大さが分かる。巨大な城壁の建設には皇帝ユスティニアヌスが関わっていたという記録がある。シナイ山はモーセが十戒を受け取った場所であり,燃える柴から神がモーゼに語りかけたのがこの麓,というとびきりの聖地。4世紀以来キリスト教徒の重要な巡礼地であり,修道士を守るとともに巡礼の保護をも目的とした要塞。このモザイクが素晴らしい。聖堂を覆う大理石は遠くプロコネソス島(現在のトルコ,コンスタンティノポリスの南西180km)から運ばれた。

Saint Catherine's Transfiguration

主題は神の変容で中央がキリスト,制作は565/566年。

ここのイコンも素晴らしい。

Christ Icon Sinai 6th century 84cm×45.5cm

 

 Saint Peter, a 6th-century encaustic icon from Saint Catherine's Monastery, Mount Sinai

 高さ 92.8 cm×53.1cm

右手に鍵を持っているので聖ペテロ。

Icon of the enthroned Virgin and Child with saints and angels, and the Hand of God above, 6th century, Saint Catherine's Monastery, perhaps the earliest iconic image of the subject to survive .68.5 cm×49.7 cm

 

上の二つのパネルはかなり大きく,対面したらまさにキリストや聖ペテロその人と向かい合っているような感じではないだろうか。イコンと聞くと様式化されたものしか思い浮かばなかったのだが,これを見ると最初期がもっとも優れているといいたくなる。見据える目。

初期キリスト教美術を知っている人々には有名なのだろうが,ほとんどこの領域に興味が無かったので,いま改めて目を見開かれる思い。