フーケの『ピラトの前のキリスト』に関連して、レンブラントを見てみる。
Christ before Pilate: Large Plate 1636年 エッチング 55.2 x 44.9 cm
レンブラントの作品は,装飾写本やデューラーの版画よりサイズは大きいと思うけれど,これだけの群衆を一つの場面に収めようという意志がまず凄い。15世紀や16世紀の画家たちとは,違うものを表そうとしているのだと思う。ピラトとユダヤ祭司たちの攻防。キリストを捕らえている兵士たち。建物の外にいる群衆たちの動向。その上方で天からの光を見に受けているキリスト。映画的ともいえる。
何度も書いてきたように思うが,フーケも含めて装飾写本の世界や,デューラー,ルーベンスあたりも,現在の私たちとは異なる過去の人という感じがする。ところがレンブラントは同時代性を感じる。宗教的対立,保身を考える人間の醜さ,ひと時の熱狂に囚われてしまう群衆,傍観者,超然としている者など,衣装は違っても,同じだと思うところがある。
※最初はこの作品もフーケの項に書いてみたが,どうにもうまく収まらないので別項に書いた。