ブラウンとホーヘンベルクのヨーロッパ都市地図 16世紀の世界から

アントワープ

Antwerp, Belgium,  Joris Hoefnagel  (1542–1600) 1598
   45cmx 70.8 cm Braun and Hogenberg   第5巻第27図

 

解説文を読むと,15世紀後半にブリュージュと海を結ぶズウィン運河が泥で埋まってしまった。それまで金融・貿易の拠点として繁栄していたブリュージュは没落、代わって台頭したのがアントワープ。その繁栄を極めたころの様子を1542年にこの街に生まれたホフナーゲルが描いている。

 この地図を見ると,上部に海,周囲を城壁と運河で囲まれている。南端に星型の砦が見える。これは1567年にアルバ公の命によりルカ・パキットの設計で築かれたものだという。形としても美しい。しかし1567年にはスペインの軍隊がこの街を蹂躙,6000人もの市民が虐殺され,800軒の家々が瓦礫と化したという。この地図を入手した大型本で見ると,そのはかない繁栄の様子が隅々まで丁寧に描かれていて,つい引き込まれていく。例えば,星形の砦。

 

街を取り巻く運河の様子。

 

アントワープを訪れたことがあるが,このような美しい町の面影はなかったと思う。今でもそれが残っている街がヴェネツィア。

 

 星型砦は日本でも作られた。函館の五稜郭が有名である。この城郭も敗北の歴史の中にあった。

函館市五稜郭のステレオ空中写真 国土交通省