ケネス・クラークの「風景画論」(佐々木英也訳,ちくま学芸文庫,2007年)第2章 事実の風景

「ある土地を明瞭に示す地誌的風景を最初につくった画家は“カンパン”の流れに立つスイス人のコンラート・ヴィッツであろう。」(p65)

The Miraculous Draught of Fishes 

1443-4 132 cm ×151cm Musée d'Art et d'Histoire 

(Geneva)

クラークは,この作品ではジュネーブ湖畔がラファエル前派的描写で細密に描かれていると述べている。キリストの頭上の山はモンブランである。 

 奇跡の漁どりとは,以下のような話。ガリラヤ湖畔でペテロとアンドレの兄弟が漁をするために網を打っていたが不漁だった。キリストが沖で漁をしなさいと言い彼らが従うと,大漁だった。驚きひれ伏すペテロに対し,「これからは人をすなどるものになるのだ」と告げて,彼らが最初の弟子となったという話。

 

コンラート・ヴィッツについて、クラークは以下のように書いている。「コンラート・ヴィッツはある種の奇異な形態に憑りつかれた芸術家であり,この形態の全く逐語訳的に正確な表現に熱中することによって憑かれた夢魔からの一種の逃走をはかろうとする傾向の画家であったことが知られている。」 これが何を示しているのか,すぐには分からない。疑問として置いておこうと思う。今までの経験からすると,どこかで答えに突き当たるはず。

 ヴィッツの気になった作品を挙げておく。

Saint Christopher  circa 1435 バーゼル美術館

かなり深い海をキリストを背に載せて歩く聖クリストフォロス。波紋が同心円状に広がっている。上の絵でも波紋は良く描かれている。湖に遠くの山。