ユベルマンの口直しになるかならぬかわからないけれど,美しい絵が見たくなった。

コンパニオンガイド」 エリカ・ラングミュア著,高橋裕子訳、2004より

コジモ・トゥーラの作品

A Muse (Calliope?),Cosimo Tura(before 1431 - 1495)probably 1455-60

116.2 x 71.1 cm 

 この絵は,フェラーラ近郊のヴィラ・ベルフィオーレの「ストゥディオーロ(小書斎)」の壁に描かれていた。ストゥディオーロはリオネロ・デステ(ボルソの弟)のために着工され,絵のテーマもリオネロが選んだ。この女性像はミューズ,カリオペではないかとHPには書いてある。ムーサ,英語でミューズは,ジュピターと記憶の女神ムネモシュネの娘たちである。この像は女神が持っているさくらんぼの枝から詩の女神カリオペ?とも言われる。ラングミュアは「主役の意味をめぐる謎はこの寓意像の魅力の一部にすぎない。」(92)として,技法の謎についても言及している。この絵は卵テンペラの上に透明性の高いグレーズの層が重ねられており,トゥーラはネーデルラントの画家(おそらくロヒール・ファン・デル・ウェイデン)の作品の知識を持っているだろうとのこと。

 

 この絵はまず色合いが独特。緑の帆立貝にサンゴと水晶の宝玉の飾り。両側の目の赤いおそろしげな金色の生き物はイルカらしい。濃紺のドレスに金襴の袖。赤いマントの裏が緑で背景の空が深い青。ラングミュア曰く,色彩の「キャンディのような華麗さ」。そしてこの女神の風貌。トゥーラの描く女性の中では,普通の顔立ちというか美しいと言えなくもない気がするが,ギルランダイオやボッティチェッリと比べると,本当に変わっている。同じフェラーラ派でもデル・コッサの女性はまだ可愛い。

聖ルチア,フランチェスコ・デル・コッサ 1472,サミュエル・H・クレス・コレクション

目玉がちょっと怖いが,これは聖人のアトリビュートなので致し方ない。フェラーラ派だから,顔が独特というわけでもなさそうだ。

 

 トゥーラの女性は,額がとても広く目付きが独特なので変わっていると感じられるのか。いやそれだけではない,この絵全体のポーズと言い,色合いと言いどうにも奇妙だが,最近好きになってきた。以前はどこが良いのか全く理解できなかったが,最近この奇矯な雰囲気がどうにも癖になる。たぶんこれは澁澤が書いている。(これについては別の項で書く。)

 

以前にコズメ・トゥーラあるいはコジモ・トゥーラの作品について書いたことがある。「スキファノイア 7月 コズメ・トゥーラ」というタイトル。

https://ameblo.jp/25juqrdlo/entry-12581126714.html

自分で書いてすっかりキュヴェレのことを忘れていたが,7月はキュヴェレとユピテルに属していて,キュヴェレも凱旋車の上に乗っていた。マンテーニャの絵は1505年,スキファノイアは1470年頃か,時代も近い。そのころキュヴェレ信仰にスポットがあたっていたのだろうか。