パリコミューンの時,ヴァンドーム広場で円柱が破壊されたときの写真。無残な感じである。クールベは撤去しようとは言ったが,破壊しようと主張したわけではなく,コラムのボルトを抜くことを提案した。この提案は却下され,破壊されることになった。

柱の頂上にあったナポレオン像が引き倒されている。

このナポレオン像も,もともとはアウステルリッツの戦いの勝利を記念して1810年に建てられたが,その後彼の死後破壊され,またナポレオン三世によって1863年に月桂冠にローマ風の衣装のナポレオンとして再建された。趣味悪いと思うが。(振り返ると,建て替えてまだ7年とできたばかりだったのだ。ナポレオン三世に対する反発もきっと大きかったのだろう。)

 

 モニュメントも,時が移り変わるとその意味を失うことの良い例だが,この円柱とナポレオン像は再建されることになる。クールベは破壊の責任を問われ,その費用の一部(と言っても莫大)を請求された。1873年にスイスに亡命,その地で1877年に58歳で亡くなった。ヴァンドーム広場に今も再建された柱とナポレオン像は残っている。

 

 現在,アメリカでの〈Black lives matter〉の動きに連動してロンドンで奴隷商人の彫像が撤去される動きがある。奴隷商人の彫像が立っていることに疑念を持つ人が多くいるということだろう。時が経つと意味を失って,あるいは評価が逆転してしまう彫像,日本にも有るのだろう,きっと。