エラスムスの像といえばホルバインの絵が有名で,教科書にも載っている。
ハンス・ホルバイン 1523年 バーゼル市立美術館
これを見ると穏やかで思索にふける感じ。
ところでデューラーもエラスムスを描いていた。
ホルバインと比べるとどうも生気がない感じではある。こんなに皺を念入りに描かなくても良いのでは。もう一枚エラスムス。
ルーブル 1520
ますます年老いた感じ。特徴的な帽子を別にすれば,学者とは思えない感じだ。ホルバインの高貴な感じとは違う。
メランヒトンも描いていた。
これはなかなか力作。誠実そうだけれどちょっと熱がこもる危なげな目つきが,いかにもこんな人だったろうと思わせる。以前にクラナッハの描いた肖像画を挙げた。
こちらは鋭いけれども穏やかな学者という感じだ。
人の印象は顔によるところが多い。歴史的な人物だと大体載せられる肖像画は決まっていて,それによってその人物のイメージが固まってしまうことも多い。いろいろな画家の肖像画を比較してみると,描かれた人物のイメージも揺らぐし,また画家の力量や人間の顔の捉え方の違いも見えておもしろい。
肖像画家としてはクラナッハやホルバインの方が評価されるかもしれない。見ていて心地良いし,過不足なく捉えている。これならどこに飾っても邪魔にならない。ではデューラーはどうか。目の前にいる人物の優れている面だけでなく,そうでない面,弱い面や過剰すぎる点も捉えて描いてしまう気がする。その点では単なる“肖像“を描いているのではないのだろう。