ヴァールブルク著作集5の第4章「フェッラーラのスキファノイア宮におけるイタリア美術と国際的占星術」についてのローマでの1924年に行われた講演。

  問題は「初期ルネサンスの文化にとって,古代の流入は何を意味したか」

 24年前にフィレンツェで彼が述べたこと

① 15世紀のボッティチェッリトフィリッポ・リッピの絵画への古代の流入は,古代の視覚芸術年を模範とする,身体と衣服の激しい可動的表現を通してなされたこと。

ボッティチェッリ ヴィーナスの誕生

Filippo lippi, affreschi del 1452-65, banchetto di erode Duomo di Prato

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風になびくかのような衣服と軽やかに上げた片足,この動きこそ古代からの流入としてヴァールブルクが好んだもの。

②若きデューラーの「オルペウスの死」から「嫉妬」は,真にギリシア的な「情念の定型」(patosformel),に負っている。(北イタリア,マンテーニャを経由して)

③フランドルのタピスリーやフランス風の服装で現れる人物像が,異教的古代の人物を表現しえた

④北方の書籍文化における古代への関心の深さ 神話に関する図解入り手引書があった

 ・12世紀に活躍したイングランドの修道僧アルベリクスの『神像小論』(※)

  →フランスへの影響

  →南ドイツ ランツフートのレジデンツの暖炉に描かれた七つの惑星を示す神々。木版本 

   による国際的広がり

「私はすでにかなり以前から,スキファイノ宮のフレスコ画についての詳細なイコノロジー的分析が,古代の神々の図像世界についての,この中世の二重の伝統を明らかにするに相違ないと確信していました。」ここでは,ヴァールブルクはかなり明確に強い言葉でこう述べている。このテーマが彼にとっていかに重要であったかを示すものだろう。

 

※ 補注によれば,異教の神々に関する中世の論考の著者とされた「アルべりクス」とは,おそらくイングランド人アレグザンダー・ネッカムであること。神像小論』は1400年頃北イタリアで著され,この書はペトルス・ベルコリウスの著作からの抜粋であること,ヴァールブルクが言う「アルべりクス」は「ベルコリウス」の翻案である神像小論』に関係づけられるべきであることが述べられている。(P116-117)