ベラスケスのマルガリータ・テレサはむろんハプスブルグ展の目玉であり,前回もよく見たつもりだったが改めて見るといろいろ発見があった。この少女は右手におそらく皮の手袋をはめており,左手には濃い茶色のマフを持っていると言うことである。この両手の意味は何かと図録を見たが,マルガリータのドレスについては延々と説明があるが,持っているマフと手袋については何も書いていない。同じベラスケスの描いた『フェリペ四世像』でも左手はやはり手袋をはめ剣の束に手をかけていて,右手は紙片を握っている。マルガリータの背景はコンソールテーブルが置かれているのだろうか,ちょうど顔の横あたりに小さな金のライオンの置物がある。ちなみにこの膨らんだドレスは,グアルダインファンテ(子供隠し)と呼ばれている。これは社会上認められない(非嫡出子)の妊娠を隠すために考案されたという根拠の無い伝承に基づくそうだ。しかしながら王族の間でこれが流行り続けたのは,確実な王位継承をもたらす為子供を産める健康な身体をアピールしているのではとか。21世紀になっても子供どころか,男の子どもにこだわって位を継承させようという国もあるから,

このスカートを滑稽と笑うこともできない。

 さてそれよりもこの手袋の右手とマフを持つ左手が気になる。フェリペ4世の手袋は剣を持つわけだから説明がつくが,何も可愛らしい手を持っているこの少女がスカートをつまむのに手袋をつけなくても良いのではないか。そしてこのマフも妙に長い。

 

考えられるのは,色の配置のバランスを取ったとか?ここにマフがないとあまりにもスカートが大きすぎて締まりがなく,また右手を手袋で覆うことによって,顔と左手の白い輝きが増す。髪につけた青いリボンも同じ理由に思える。リボンがなく全面ふわふわ金髪だとどうもめりはりに乏しい。などと考えて見たが,もっと明確な理由があるのならば誰か教えてほしい。