私が40年以上も前に社会福祉協議会職員だった頃の思い出話です。

少しずつ仕事に慣れてきた頃、私はノーマライゼーション啓発事業の

「ふれあい広場事業」に取り組むことになりました。

 

ノーマライゼーションとは、

「障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方」なのですが、

その考え方を多くの人達に知ってもらうために行う取り組みの総称が「ふれあい広場事業」でした。

その頃の国や道の社会福祉協議会は補助金を出して、各市町村での開催を推進していました。

当時の恵庭市社協は職員が事務局長以下4人で、その一人が新米の私でした。

そんな状況で新しい事業に取り組むことは大変ですので、指定を受けることに二の足を踏み続けていたようです。
というわけで、多分私が仕事を始めて二年目頃に事務局長から

「Kさん、指定受けていないのはうちだけで、やらざるを得ないんだよ。引き受けていいだろうか」と言われました。

当時の社協の状況は何となく理解し始めていたので、新規事業をしようにも予算はないし、

社協を構成する評議員も理事もハッキリ言って高齢者が多い。

ボランティアと言えば日赤奉仕団関連がほとんどで、

若い人たちは「手話の会」と、前年に発足した布の絵本作りの「たんぽぽの会」くらい。

ふれあい広場事業の開催要綱や、各地の開催事例を眺めながら私は悩みました。
「ボランティア」という言葉でさえまだ市民には一般的ではなく、

ましてや「ノーマライゼーション」なんて、多分コアな福祉関係者しか知らないでしょう。

しかし、補助金の80万円(忘れっぽい私ですが金額だけは記憶しています)は魅力でした。

形だけの開催ならできるような気がしましたが、

私はこの補助金事業を通して市内の若手の福祉施設職員や、

まだその姿は見えてはいないけれど存在しているに違いない障害を持つ在宅の若い人。

そして、福祉に関心を持ってほしい若い人たちの顔合わせとネットワークづくりをしたいと考えたのです。
そのネットワークを通して、この事業を継続したい。

もしそれができなければ、単年度の行事で終わってしまいます。

というわけで、指定を受けることは決めましたが、受けたのは年度末(多分、二月か三月)。

それから次の年度中に開催しなくてはならないので、その年は私の能力全開で頑張ったと思います。
まあ、その経緯について書くことは長くなる(これまででも十分長い)ので割愛しますが、

その時に出会ったのが若かった二分脊椎の難病を抱えた遠藤さんでした。

彼女はその後、道社協の障害者の海外視察研修に参加し、

そこでつながったネットワークや経験を生かしながら、

精力的にかつ自然体にノーマライゼーションを体現し続けてきました。

私の退職後は、時々彼女と連絡を取ることはあっても、共に活動することはありませんでした。

そんな遠藤さんから久しぶりに電話があったのは昨年の秋頃でした。
「今度、和光小学校の総合学習で話すことになったんだけど、ふれあい広場について確認したいことがある」

とのことでした。

はっきりいって「ふれあい広場事業」なんて今は死語に近いはずです。

名称としては残っているかもしれないけれど、遠藤さんたちと取り組んだような、

障がいがある人もない人も、老若男女がみんなで知恵を絞りながら、

自分たちの町に何が必要なのかを企画し行動するような活動は、少なくとも当地には見当たりません。

現在は社会福祉協議会の役割は「ノーマライゼーションの啓発」よりも、

高齢者福祉の担い手になっているような気がします。

それは時代や国の方針に強い影響を受けざるを得ない社会福祉協議会としては、やむを得ないことだと理解しています。

そんな今、彼女から「ふれあい広場」と「総合学習」という言葉を聞き、本当に嬉しく思いました。
「総合学習」もゆとり教育とセットで始まったように記憶しているのですが、

その後ゆとり教育の見直しや、形骸的な総合学習になっていったり、教師の負担が大きいなどで、

時間も短縮されてきたような気がしていて、

かつて「総合学習」にとても期待していた私としては、かなり残念な気持ちになっていました。

さらに、「未来の会」で不登校の子の親やお子さん達に話を聞いていると、

現在の学校教育に対する失望感が募ることが多く、

遠藤さんから和光小学校での山田先生の取り組みを聞いて、

「まだこのような取り組みがされているのか!」と本当に嬉しかったのです。

半月ほど前、遠藤さんからご自分の所属する団体の機関誌にその総合学習について投稿したと知り、

それを読んでさらに感動したので、遠藤さんやこの総合学習をしてくださった山田先生のご了解を得て、

このブログに書かせていただくことにしました。

それについては、次のブログをご覧ください。