ファンが増えている、肉々しくワイルドな「グルメバーガー」とは?

ケボライト
2018/05/15 19:29

関西の議論
2018.5.15 10:00

 関西に本場・アメリカ風のハンバーガー専門店が増えている。時間がないときに食べる「ファストフード」とは大違い。本格的なハンバーガーを、“肉料理”として食べたいというファン、そして提供する店が広がりつつあり、こうしたハンバーガーを、「グルメバーガー」と呼ぶ人もいる。おしゃれなクラフトビール(地ビール)とのペアリングを楽しめる店もあり、カラフルでボリューム感のある写真はインスタ映えもするとして、女性のファンも増えているという。

 ■こだわりの“グルメバーガー”、さらにレベルアップ

 つややかに光るバンズ(パン)の中には、レタスとトマト、チーズに自家製ベーコン、大きなパティ(肉)。高さ約10センチ、色鮮やかなハンバーガーが運ばれてくると、自然と気持ちが盛り上がる。がぶりと一口、あふれ出す肉汁とともに牛肉のうまみが口中に広がった。

 大阪・ミナミのアメリカ村にある「リッチガーデン心斎橋本店」の店主、安藤啓示さん(32)は「こんなに色鮮やかで、口や手を汚すワイルドさがあり、みんなが笑顔になれる食べ物はない。ハンバーガーの魅力をもっと多くの人に知ってほしいですね」と力を込める。

 ファストフード店なら5百円以下で買えるハンバーガーだが、専門店では千円以上。平成25年の開店当初は「そんなに払えない」という風潮が強かったという。だが、専門店それぞれのこだわりが、ファンにも少しずつ理解されるようになってきた。

 「ハンバーガーは肉料理なんです」と安藤さん。同店のパティは米アンガス牛100%の超粗びきで、ステーキのような肉々しい食感。店で燻製したベーコンは薫り高く、甘みのあるバンズと絶妙にマッチする。肉と野菜を載せる順番によっても味が変わるため、日々研究を続けている。

 こうした本格ハンバーガーを、西日本ハンバーガー協会創設者の薮伸太郎さん(40)は「グルメバーガー」と呼ぶ。薮さんによると、数年前から東京で、バンズは天然酵母、パティは最高級ランクの牛肉といったグルメバーガー専門店がブームに。関西出身の人がこうした専門店で修行し、関西に戻って店をオープンさせる形で専門店が増えてきたという。

 これまで5千食以上のハンバーガーを食べてきた薮さんによると、こうした専門店では、レタスの折りたたみ方に特徴がある。大きなレタスを何度も丁寧に折りたたんで一番下に入れることで、ふんわりと空気が入り、食べるとザクザクと重層的な歯応えに。「関西の専門店のレベルは確実に上がってきた」と薮さんは評価する。

 ■ご当地バーガー人気は一段落、次はおしゃれな米国発チェーン

 薮さんがハンバーガーの食べ歩きを始めたのは平成16年。当時、グルメバーガーを提供する店はほとんどなく、テーマパーク「ユニバーサルスタジオジャパン」や、欧米の旅行客が利用する高級ホテルの中にあるレストランくらいだった。しかし翌年、長崎の「佐世保バーガー」の専門店が大阪・梅田に誕生し、大ブームに。地元の食材を使った「ご当地バーガー」が、各地で生まれるようになったという。

 薮さんによると、現在では各都道府県に10~20種類のご当地バーガーがあり、合計1千種類以上。「ご当地バーガー」とうたっていなくても、喫茶店などで地域の食材を使ったハンバーガーを提供している例は多い。今年3月には大阪府吹田市の万博公園で「バーガーEXPO2018」、5月4日には神戸市東灘区の岡本商店街で「岡本ハンバーガーフェスティバル」など、毎月のようにご当地バーガーのイベントも開かれている。

 ただ、最盛期に比べるとご当地バーガーのブームは一段落しており、そのころから台頭してきたのがグルメバーガーだ。個性豊かなクラフトビールとのペアリングを楽しむ文化も広がってきた。小さくてつまみやすいミニハンバーガー「スライダー」なども米国から伝わり、さらに多様性が増している。

 そもそも日本のハンバーガー店としては、昭和46年に一号店がオープンしたマクドナルドが草分けだ。全国約3千店(3月末時点)、バーガー類の年間販売個数は約14億個と、現在も圧倒的な存在感。日本マクドナルドは近年のハンバーガーブームについて「お客様の選択肢が増えることになるので、ハンバーガー業界全体が盛り上がることは大変喜ばしい。マクドナルドはお子様からご年配の方まで男女問わず親しんでいける味わいを、お得で気軽なメニューと楽しいキャンペーンでお届けしていく」とコメントしている。

 そして今、新たに押し寄せつつあるのがさまざまな米ハンバーガーチェーン店の波だ。ニューヨーク発の「シェイクシャック」やカリフォルニア発の「カールス・ジュニア」、ロサンゼルス発の「ファットバーガー」…。「日本にハンバーガー文化が根付いたところで、続々と東京にオープンしています。そして少しずつ、関西にも出店を始めています」と薮さん。

 今年6月には大阪・梅田の阪神百貨店梅田本店に「シェイクシャック」がオープンする予定だ。「モダンなバーガースタンド」をコンセプトにしたスタイリッシュな店舗で、平成27年から東京、横浜に8店舗を展開。挽きたてのアンガスビーフをミディアムに焼き上げたシャックバーガー(シングル、税別710円)や、シトラスの風味が特徴的なオリジナルクラフトビールを揃える。

 運営するサザビーリーグ・シェイクシャック事業部は「東京、横浜の店舗には日本中からゲストが訪れ、関西出店を望む声が増えてきた。シェイクシャックは、デートや誕生日を祝う大切なシーンでも使っていただけるレストランでありたい」としている。

(加納裕子)

http://www.sankei.com/west/news/180515/wst1805150004-n1.html