今更聞きづらい、しかし基本中の基本、イスラム教の宗派の違いです。
大別して多数派のスンナ派と少数派のシーア派があるというくらいは、お聞きおよびでしょう。
632年、イスラム教の開祖であるムハンマドが亡くなると、イスラム教最高指導者をカリフとして選出します。選挙において、です。
4代目のアリーは、ムハンマドの従兄弟であり、娘の夫でした。このアリーとその子孫を真のカリフとして正統とするのがシーア派です。
スンナ派は代々のカリフを正統と見なしています。
この多数派スンナ派もイスラム法の解釈によってさらに派が分かれます。
ハナフィー派 トルコ・シリア・エジプト・中央アジア・南アジア
マーリキ派 アラビア半島東部・北アフリカ
シャーフィイー派 イエメン・エジプト東部・イラク中部・東南アジア・東アフリカ
ハンバリー派 カタール アラブ首長国連邦東部
そしてこの最後のハンバリー派からさらに派が分かれ、サウジアラビアの国教ワッハーブ派があります。
ワッハーブ派 18世紀中頃、宗教改革者ワッハーブが創始。ワッハーブ王国が誕生し、それが今のサウジアラビアに繋がります。サウド家は東部の豪族で、そのサウドのアラビアが「サウジアラビア」と、一つの王族家庭が国家となっているのです。
ムハンマド時代の原始イスラム教への回帰を唱え、極端な禁欲主義で知られます。
「コーラン」と「ハディース」(ムハンマド伝承集)のみしか認めず、聖人崇拝・墓参りは認めていません。
このワッハーブ派の中からイスラム過激派やテロ集団が出てくるのですが、その中でも勢力を誇っているのがアルカイダやイスラム国なのです。
イスラム世界では国境線上の「国」ごとより、「宗派」で結びつくということを頭に入れておいて下さい。「宗派」が同じであれば遠くの地でも加勢する・・・。
例えば、中央アジアのフェルガナ盆地付近や中国の「新疆ウイグル自治区」内で、今後新たなイスラム国ができることも充分あり得るのです。